最新記事

ロシア

ミサイル防衛システムは最後の切り札

イランのミサイル防衛に手を貸すぞ、という脅しで各国から譲歩を引き出してきたが

2009年7月21日(火)15時01分

 アメリカとロシアは7月6日、核兵器削減に向けて合意した。しかし公式声明には重要な問題が抜け落ちていた。高度ミサイル防衛システムをロシアがイランに提供する契約についてだ。実際に提供されれば、アメリカやイスラエルがイランの核施設を攻撃することが今よりずっと難しくなる。

 契約が成立したのは07年だが、まだ引き渡しは行われていない。ロシアはこのミサイル防衛システムを利用して、さまざまな国から譲歩を引き出そうとしている。

 いい例がイスラエルだ。同国は4月、ロシア製よりはるかに性能の高い5000万ドル相当の無人航空機をロシアに売却することで合意。またイスラエルはロシアの要請を受けて、グルジアへの兵器関連の輸出をイスラエル企業にやめさせることも承諾している。

 だがアメリカやイスラエルは、ミサイル防衛システムはロシアにとって残り少ない切り札の1つだということを承知しているはずだ。ロシア政府はイランのブシェール原子力発電所の建設を支援することで、イランに対する影響力を確保してきた。

 だが原発が完成した今、ロシアがイランへの影響力を世界にアピールする手段はミサイルシステムくらいしかなくなった。イランに対する影響力が減ったのは確かだ。

[2009年7月22日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州エネルギー大手、24年は気候変動対策を後退 短

ワールド

韓国情報機関、負傷した北朝鮮兵が捕らえられたと確認

ワールド

中国工業部門利益、1─11月は前年比4.7%減 マ

ビジネス

米経済の不確実性一巡まで「注視する辛抱強さ必要」の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部の燃料施設で「大爆発」 ウクライナが「大規模ドローン攻撃」展開
  • 4
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 5
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 8
    わが子の亡骸を17日間離さなかったシャチに新しい赤…
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中