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中国政府が恐れるもう一つの通貨

2009年7月10日(金)14時55分
バレット・シェリダン

仮想マネーがリアルマネーを駆逐する? Reuters

 中国政府がバーチャル通貨の取り締まりを強化しているという。

 バーチャル通貨とは、多人数参加型オンラインゲームなどインターネットのサイト内でのみ通用する通貨。プレーヤーはバーチャル通貨を使って武器や装備を買い、有利にゲームを進めようとする。熱心なプレーヤーのなかには、現実の通貨を使ってバーチャル通貨を買う者もいる。もともとサイト内だけで通用していたが、次第に現実の商品やサービスの売買にも使われるようになった。

 こういった状況に目を付け、「仮想搾取工場」にプレーヤーを集めてこうしたゲームを何時間もやらせ、集めた戦利品を売って現実の通貨を手に入れる起業家もいるらしい。

 政府系機関の中国インターネット情報センターによれば、08年だけで20億謖近くのバーチャル通貨が中国で取引された。巨大なバーチャル通貨の地下経済が存在すると指摘する専門家もいる。

 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、中国で人気のサイト「QQドットコム」で使われるバーチャル通貨「QQコイン」のレートが人民元に対して急騰し、中国人民銀行の当局者を驚かせることもあるという。

 このため中国政府は6月26日、現実の通貨同様にバーチャル通貨に規制をかける新たな通知を出した。バーチャル通貨の取引と使用を厳しく管理した上、現実の物品との交換は禁止。未成年者への販売もできなくなった。

 世界経済危機でドルの凋落が叫ばれて久しい。人民元が基軸通貨としてまだ力不足なら、いっそのことQQコインにその役割を担わせればよかったかもしれない。

[2009年7月15日号掲載]

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