心が疲弊するだけ? 出会い系アプリで本当に幸せになれるのか
嫌いだけどやめられない? RossHelen-iStock
<爆発的に利用者が広まっているサービスだが使い過ぎるとリスクも...>
近年、日本でも急速に普及している出会い系サービス。出会いを求める男女をインターネット上でマッチングさせるというもので、ティンダーなどが有名だ。
日常生活ではなかなか接点がない属性の人たちとも簡単に沢山出会うことができるこの便利なサービスは世界中で爆発的に広まっているという。しかし、便利さの陰には常にリスクが潜んでいる。
『セックス・アンド・ザ・シティ』をはじめ数々のヒットドラマを世に送り出してきた米国の放送局HBOが9月10日に放送したドキュメンタリー『スワイプド: デジタルエイジの恋愛(原題はSwiped: Hooking Up in the Digital Age)』では、社会現象となっている出会い系サービスの光と影を徹底調査。私たち日本人にとっても、非常に興味深い内容だ。
出会い系は過酷な戦場――嫌いなのにやめられない人々
このドキュメンタリー番組の企画・製作を手掛けたのは、ジャーナリストのナンシー・ジョー・セールス。セールスは、今から3年前の2015年、米バニティ・フェア誌に『ティンダー、そして「デーティング黙示録」の夜明け(原題はTinder and the Dawn of the "Dating Apocalypse")』を寄稿。この記事をきっかけに出会い系サービスに興味を持ったセールスが同じテーマをさらに深く掘り下げたのが、今回のドキュメンタリーだ。
3年前の記事では、マンハッタンの金融街にあるバーを取材。そこでセールスは、若い男女が一様にスマホを覗き込んでティンダーを操作する異様な光景を目にした。
取材を受けた人々は、ティンダーが嫌いなのにやめられないと口々に発言。ウォール街の投資銀行の同僚同士で飲みに来ていた「ハイスペ・イケメン」3人組も、ティンダー利用者。サービスを経由して何名もの女性と知り合ったそうだ。引く手あまたな彼らは、ひとりの女性で満足することはないのだ。
3人組のひとり、アレックス(仮名)は「ひとりだけ、なんて無理だよ。もっと素敵な人が常にいるからね。もし、どこかのレストランに予約していたとしても、パ・セ(Per Se)(注:ニューヨークのフレンチレストラン)のテーブルが空いたらそっちに行きたいと思うでしょ」などと語った。
さらに彼は、「男にとっては、すべてが競争だからね。(中略)誰が一番魅力的な女の子と寝たかってね」と赤裸々な本音を明かした。日本で婚活を頑張っている女性にとっても、聞き捨てならない発言かもしれない。
それから3年。出会い系サービス業界は、どのような変化を遂げたのだろうか?
裸の画像を送り付けられた女性も
出会い系サービスの利用者は、この数年間の間に爆発的に増え続けているという。同番組によると、現在米国の利用者数は4000万人以上にも及ぶ。選択肢が多いのはいいことばかりではない。あまりにも多すぎると、今度は決断するのが難しくなると同番組でも指摘している。
同番組では、ティンダーの共同創業者・最高戦略責任者のジョナサン・バディーンをはじめ、出会い系サービス企業の経営トップにインタビュー。さらに、ジェンダーやセクシュアリティ、心理学など研究者らにも専門的な意見を求めた。
利用者の生の声は、全米4都市在住の、様々なバックグラウンドを持つ18~29歳の男女6人から集めた。複数の若い女性からは、「こちらから求めていないのに一方的に(男性の)裸の画像を送り付けられた、リベンジポルノのターゲットにされた、セックスをするようプレッシャーをかけられていると感じた」など危険な体験談も。出会い系サービスのダークサイドが、改めて浮き彫りになった。
さらに、出会い系アプリの利用者は80%が真剣な交際を求めているものの、ほぼ同じ割合の利用者が一度も真剣交際に至ったことがないと回答したことが業界調査で明らかになった。この調査結果も同番組で紹介された。