最新記事

教育

米大学ランキングは信用できるか

受験生や親にとっては「大学選びのバイブル」だが、少しでも評価を上げようとする大学間競争には極めて不健全な問題も

2015年9月10日(木)18時00分
マックス・カトナー

名門の座は不動 3年連続首位のプリンストン大学(写真)をはじめ、上位にはアイビーリーグがずらり Eduardo Munoz--REUTERS

 オンライン雑誌USニューズ&ワールドリポートが9日に恒例の米大学ランキングを発表。プリンストン大学とウィリアムズ大学がそれぞれ総合大学部門とリベラルアーツカレッジ(教養学科大学)部門でトップに輝いた。

 USニューズ誌は毎年9月に大学ランキングを発表している。総合大学、リベラルアーツカレッジ、地方大学など、部門別にアメリカの大学を評価したもので、受験生や親にとっては大学選びのバイブルになっている。

 総合大学部門では、プリンストン大は3年連続首位。2位はハーバード、3位はエール、4位にはコロンビア、スタンフォード、シカゴの3校が並び、カリフォルニア大学バークレー校は公立の総合大学部門で1位になった。

 リベラルアーツカレッジ部門では、ウィリアムズ大が13年連続で首位の座をキープ。2位はアマースト大、3位はスワスモア大で、4位にはボードン、ミドルベリー、ポモナ、ウェルズリーの4校が並んだ。

 リストには1376校が含まれ、その他の数百校のデータも掲載されている。

 USニューズ誌が大学ランキングを開始したのは1983年。大学進学者が急増し、受験生や親たちが志望校選びの参考になる「消費者向け」の情報を求めるようになった時期だ。

 評価の基準はここ数年変わっていない。他大学の関係者による査定、中退率の低さ、教授陣の充実度、入学者の成績、資金力、卒業率、卒業生の寄付率などが考慮される。総合大学とリベラルアーツカレッジ部門については、高校の進学カウンセラーの評価も加味される。

 しかし、大学ランキングには批判もある。大学間の過当競争を招き、入学選考で不公正で倫理にもとる慣行がはびこるなどの問題が指摘されているのだ。たとえば、一部の大学は留学生の割合を増やすため、留学生にはSAT(大学進学適性試験)の成績提出を求めていない。そのため、アメリカ人学生よりも学業成績の低い外国人学生が優先的に受け入れられる可能性がある。

教育を歪めるランキングに反対する運動も

 さらに、大学当局はランキングでの評価を上げるために、学業やスポーツなどで突出した能力を持つ学生を入れようと、特待生制度に力を入れる。その結果、経済的な理由で奨学金を必要とする学生が就学機会を奪われかねない。

 こうした理由から、教育NPO・エデュケーション・コンサーバンシーは大学ランキングに反対する運動を展開、USニューズ誌の調査に応じないよう全米の大学に呼び掛ける「学長からの手紙」をオンライン上で公開している。これまでに66大学の学長がこの手紙に署名した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中