最新記事

米経済

長期失業者が陥る無職スパイラル

求職者に対する求人数は増加傾向にあるとはいえ、恩恵を受けられるのは最近失業した人だけかもしれない

2011年5月13日(金)15時33分
トマス・ミュシャ

短期決戦 失業後1週間の人の再就職率は失業1年の人の4倍高い Robert Galbraith-Reuters

 アメリカの労働市場を、絶え間なく変化する巨大なジグソーパズルだと考えてみよう。空いている穴の部分に、労働者というピースがはまる。さらに穴が空けば、また別の労働者が穴を埋めようとする。

 そのパズルは複雑に絡み合った多くの要素――米経済や世界経済の健全度、貿易相手国の移り変わり、技術の進歩、消費需要、景況感、相対賃金、インフレ率の変動など――に左右されながら延々と続いていく。

 世界最大の経済大国アメリカが現在抱える問題は、ご存知のように穴を埋めるピースが大量に余っていることだ。米労働省が5月11日に発表した3月の求人件数を見ると、1つの求人に対する求職者数は4.3人だった。ひどい状況に思えるが、これでも過去数カ月に比べれば改善している。金融危機後の最悪の時期には、求人1に対する求職者数は約7人だった。また労働省によれば、レイオフ(一時解雇)も急減している。

雇用は永遠に回復しない?

 しかし、すべてが順調なわけではない。

 多くのアメリカ人労働者、さらにアメリカ経済全体に関わる大きな問題がある。現在の労働市場に空いた穴は循環的なものか、構造的なものかということだ。前者であれば景気が上向いたときに雇用も回復するが、後者であれば経済構造の変化によって雇用は永続的に失われることになる。

 シカゴ大学のロバート・シャイマー教授(経済学)の調査によれば、循環的変化も長期間にわたれば構造的変化になりうる。その理由は、米ニューヨーク・タイムズで「エコノミックス」ブログを執筆するキャサリン・ランペルが昨年12月に書いているように、「有能な労働者でも、失業期間が長くなるほど復職は難しくなる」からだ。ランペルが指摘する重要なポイントを紹介しよう。


 シャイマー教授の調査によれば、失業して1週間の人が1カ月以内に仕事を見つけられる割合は51%だが、失業期間がそれ以上になると復職できる割合は極端に低下する。

「失業期間が6カ月以内の人が仕事を見つけられる可能性は平均31%」と、シャイマーは書いている。そして、失業期間が「6カ月を過ぎると19%に低下し、1年以上に及ぶと14%しかなくなる」という。

 つまりこの数十年のデータをみると、失業期間が1週間の人が仕事を見つけられる可能性は、失業期間1年の人より4倍近く高いということだ


GlobalPost.com 特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

現状判断DI前月比0.4ポイント低下の48.7=1

ビジネス

中国銅輸入量、11月は2カ月連続減 価格高騰で

ワールド

ドイツ外相、訪中へ レアアース・鉄鋼問題を協議

ワールド

ミャンマー経済に回復の兆し、来年度3%成長へ 世銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中