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アメリカ社会懲りない右派の国勢調査トンデモ陰謀論
医療保険改革の次に右派が社会主義批判の対象に選んだのは10年に1度の国勢調査。馬鹿げた陰謀論が飛び交うなか、保守派の重鎮カール・ローブが意外な行動に
右派もいろいろ ローブは国勢調査は合衆国憲法の精神に沿ったものだと国民に請け合い、協力を訴えた Fred Prouser-Reuters
オバマ政権が10年に1度の国勢調査のために調査員を大量に投入するなか、右派のウェブサイトでは「国勢調査は共産主義や全体主義への第一歩だ」という陰謀説が本気で盛り上がっている。
だが4月5日、右派の意外な有力者が国勢調査を強力に擁護した。ブッシュ政権で次席補佐官を務め、オバマ政権への辛口批判で知られるカール・ローブだ。
全米の地方テレビ局で5日に放映された国勢調査のCMでローブは、アメリカで初めて国勢調査を行ったのは、彼が歴代大統領の中で最も尊敬しているジェームズ・マディソン第4代大統領だったというエピソードを語っている。「合衆国憲法の執筆者の一人であるマディソン大統領は、国会議員を公正に選出するために10年に一度の国勢調査を行うよう憲法に明記し、民主主義の手段を作り出した」
さらに、ローブはこう続けた。「国勢調査票を送り返していない人も、まだ間に合います。どうか10の簡単な質問に答えてください。この質問は、マディソンが作成に関わった1790年の初の国勢調査とほぼ同じものです」
「調査票を配らない共和党員外し」
国勢調査局の主席広報官スティーブ・ジョストは本誌電子版の取材に対し、ブッシュ政権の重鎮だったローブが国勢調査のCM出演に同意したのは、マディソンへの尊敬の念が強かったためだと語った。(ローブの事務所にも取材を申し込んだが、返事はない)。
ローブのCM出演は、オバマ政権が国勢調査を悪用するという突飛な噂が飛び交う最中に実現した。ちょうどCMが放映された5日にも、保守派の人気トークショー司会者ラッシュ・リンボーが自身の番組内で新たな説を唱えたばかりだ。
リンボーは、国勢調査局は共和党支持者の数を少なくみせるために、共和党員が多いエリアに調査票を配っていないと訴えた。「私は1970年に実家を離れて以来、一度も国勢調査票を見たことがない」
リンボーはさらに、意味ありげにこう締めくくった。「同じことが広範囲で行われているんじゃないか。共和党支持者が多い地域に調査票を送らなかったり、調査員が訪問しなかったり。何が行われていても驚かない」
人種を尋ねるのは奴隷制復活のため
一方、国勢調査局のジョストは「国民全員を調べることがわれわれの任務だ。誰一人として調査対象から外すはずがない」と反論している。オバマ政権が国勢調査を悪用しているという噂を広めようとしている右派は、リンボー以外にも大勢いる。とりわけ執拗に陰謀説を唱えるのは、右寄り報道で知られるFOXニュースの司会者たち。例えば人気キャスターのグレン・ベックは、人種に関する質問項目があるのは、国勢調査局が奴隷制を推進しようとしている表れだと示唆した。
保守派キャスターのミシェル・マルキンも、民主党が永続的に議会で過半数を維持するための「洗脳工作」に国勢調査が利用されていると主張している。