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ズバリ言おう、オバマ叩きは人種問題だ

オバマに対する反発の根源にある人種差別を避けたら、問題は解決しない

2009年10月26日(月)16時02分
レーナ・ケリー

独裁者? オバマの医療保険改革に反対するプラカード(8月17日、テキサス州ダラス) Jessica Rinaldi-Reuters

 この際はっきりさせておこう。バラク・オバマ米大統領への反発には、アフリカ系アメリカ人を元首に選んだことへの激しい怒りが含まれている。私は人種問題に付きものの婉曲表現にはウンザリ。だから遠回しな言い方はしない。

 私が人種カードを使っているって? ではまずこのお決まりの批判に答えよう。人種は政治ゲームの切り札ではない。奴隷制度、南北戦争、人種隔離政策、暗殺、無数の暴動......すねに傷を持つこの国は、明らかに人種によって分断されている。それをごまかすのは世間知らずで不誠実な行為だ。

 オバマの狩猟許可証を買おうとジョークを言った共和党のアイダホ州知事候補レックス・ラメルや、大統領夫人ミシェルの祖先は檻を抜け出したゴリラだと発言したサウスカロライナ州の共和党活動家、ラスティー・デパスは明らかに人種差別主義者だ。

 各地でオバマへの抗議活動を行った米保守派支持組織「ティー・パーティー・エキスプレス」を率いるマーク・ウィリアムズはCNNで、「労働者階級」が「自分たち」の国を、合法的に選ばれた大統領から取り戻すのだと発言した。彼はオバマの政策に抗議しているだけではなく、白人男性以外でもアメリカで最強の地位に就けるという事実に不満を訴えている。

 反オバマ派がすべて人種差別主義者だとは思わない。だが人種差別主義者は確かに存在する。彼らは黒人の大統領を快く思わない。

 とはいえ、こうした事態は予想できたはずだ。オバマのような人物が大統領になれば、余波は必ずある。人種間の枠組みを変化させるような出来事があれば、反動は避けられない。公立学校での人種隔離を最高裁判所が違憲とした1954年の「ブラウン対教育委員会」裁判判決に、まだ納得していない者がいるくらいだ。

腰が引けた主要メディア

 この国では何百年間も、黒い肌は「~未満」「~ほど良くない」「~から分離する」という特異な意味を持ってきた(ことさら「~と等しい」という意味を強調する場合もあるが)。

 ダンスや歌、バスケットボール以外の分野で黒人が他の人種より「優れている」と表現されることはまずない。だから「優越性」を象徴するオバマは、黒人を体毛のないゴリラだと見なす人々にとって脅威に感じられるのだろう。

 「主要メディア」がオバマ攻撃に含まれる人種差別的要素について唐突に報じ始めたとき、私は少し腹が立った。

 9月13日付のニューヨーク・タイムズ紙で、モーリーン・ダウドはコラムにこう書いている。「長い間認めたくなかった。初の黒人大統領を他人、外国人、社会主義者、マルキシスト、人種差別主義者、共産党員、ナチス、安楽死の名の下に老人を切り捨てる不届き者、テレビ演説で子供を洗脳するヘビ──に仕立て上げようとしたこの夏の半狂乱の裏には、人種差別的な要素が多分にあったと」

 ダウドは少なくともそれを認めたが、オバマがルイジアナ州で不人気な理由を解説した同紙の別の記事は、人種要因を巧みに避けていた。政治ニュースサイトの「ポリティコ」が、オバマ批判の急先鋒になっているサウスカロライナ州について書いたコラムで人種問題に言及したのは20段落目だ。

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