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道路からの騒音が 早死にを招く?

Traffic Noise and Premature Death

英ロンドン大学の研究で 騒音と寿命の危険な関係が明らかに

2015年8月17日(月)17時00分
フェリシティ・ケーポン

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 道路のそばに住んでいる人は早死にしがち──そんな気になる研究結果が明らかになった。といっても原因は交通事故や大気汚染ではなく、騒音だ。

 欧州心臓病学会の医学誌「ヨーロピアン・ハート・ジャーナル」に発表された最新の研究結果によれば、騒音のひどい道路の近くに長く住んでいる人は寿命が短くなる可能性がある。特に高齢者の場合は死亡率が上昇し、脳卒中のリスクも増大するという。

 ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院の研究者らは03~10年にロンドン市民860万人のデータを分析。昼夜の道路騒音のレベルと各地域の成人および高齢者の死亡数や入院件数を比較した。道路騒音と死の相関を調べた研究としては過去最大規模だ。

 その結果、昼間に道路の騒音が60デシベルを超える地域では、55デシベル以下の地域に比べて成人と高齢者の死亡率が4%高かった。心臓や血管の疾患との関連が疑われ、騒音による高血圧や不眠、ストレスも関係している可能性がある。昼間の道路騒音が最もひどい地域(60デシベル以上)では55デシベル以下の地域に比べて脳卒中で入院する人の割合が成人は5%高く、高齢者では9%に達した。夜間の道路騒音(55~60デシベル)も高齢者に限り脳卒中のリスクが5%高かった。

「道路騒音はこれまで睡眠障害や高血圧と関連付けられてきたが、死や脳卒中との相関関係を証明したのは私たちの研究がイギリスで初めてだ」と、論文の筆頭著者であるヤーナ・ハロネンは言う。「この研究結果は、道路の騒音を減らすことが健康にいいという数々の証拠を裏付けている」

 WHO(世界保健機関)は住宅地の騒音の上限を55デシベルと定め、これを超えるものは健康に有害だとしている。だがロンドンでは、160万人以上が昼間に55デシベルを超える道路騒音にさらされている。

 食事や喫煙、運動不足、高血圧や糖尿病といった心臓血管疾患のリスク要因に比べれば、騒音のリスクはさほど大きくはなさそうだ。「それでも今回の研究は都市の騒音が健康に影響を及ぼしかねない点について、さらに調査すべき重要な問題を提起している」と、論文の共著者であるロンドン大学インペリアル・カレッジ環境健康センターのアナ・ハンセルは指摘する。

 健康で長生きしたければ、住む場所にもこだわったほうがいいかもしれない。

[2015年7月14日号掲載]

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