ヒラリーもサンドバーグも「男より弱気」は本当か?
The Debate of the Confidence Gap, Part.1
女性は“科学的に”自信がないと主張し物議を醸したベストセラーが日本上陸――五百田達成氏を迎え、特別対談で真偽に迫る(前編)
あなたの周りに、優秀なのになぜかいつも弱気な女性はいないだろうか。逆に、能力が足りないのに自信たっぷりの男性は? アメリカでは昨年、男女間の「自信の格差」をめぐって論争が巻き起こった。
きっかけは、アトランティック誌の5月号に掲載された"The Confidence Gap"(自信の格差)という記事だ。BBCリポーターのキャティー・ケイとABC特派員のクレア・シップマンが共同で執筆したもので、成功している女性への取材と、心理学や脳科学の研究成果から、女性と自信の関係をつまびらかにしている。
フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグや、現在アメリカ初の女性大統領を目指しているヒラリー・クリントン、ドイツ首相のアンゲラ・メルケルに、IMF(国際通貨基金)の専務理事クリスティーヌ・ラガルド......。これら一見成功している女性たちでも、実は自信がなく、不安でいっぱいなのだという。
遺伝子検査の結果まで引用し、「女性は男性に比べて自信をもてない」と結論づけた記事に対し、感情的な反発(「いや、むしろ女性のほうが強気じゃないか!」)があった一方、女性からは共感の声も多く聞かれた。「そもそも、職場での女性の地位が低いから自信がもてないだけでは?」といった意見もあった。
なぜ、このような「自信の格差」が生まれるのか。アトランティック誌の記事は、ケイとシップマンが共同執筆した書籍"The Confidence Code"の一部を抜粋したもの。自信の男女差を科学的に明らかにし、自信をもてるようになる方法を指南した同書は、その後、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー入りも果たしている。
このほど邦訳版(『なぜ女は男のように自信をもてないのか』CCCメディアハウス)が刊行されたのを機に、男女のコミュニケーションが専門で『察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が22万部のベストセラーとなっている心理カウンセラーの五百田達成(いおた・たつなり)氏と、本書の翻訳者である田坂苑子氏に、日米の自信の違いや日本ならではの"自信事情"などを聞いた。
――アメリカの自信論争を見て、どのように感じたか(論争は日本の一部メディアでも紹介され、話題になった)。
田坂 記事が掲載された当時、勤務先の同僚の男性に「(仕事に対して)そんなに卑屈にならなくていいんじゃないの?」と言われたことがありました。