最新記事

ビジネス

中国人観光客を狙うスイス流PR術

中国語が話せるインストラクターを雇ってスキー教室を開校

2015年3月4日(水)10時52分
ローズ・ジェイコブズ

歓迎! 中国人インストラクターが教えるビギナークラス Denis Balibouse-Reuters

 中国・河北省の崇礼県出身のシュイ・チョンシンは、13年の冬にスイスへ飛んだ。スノースポーツを通じて知り合った友人に、スキーシーズンの間だけスイスで働かないかと誘われたからだ。

 スキーが盛んな国々の観光当局は、近年のホリデーシーズンには中国人がカネをたくさん落としていくことに注目している。なかでもスイスは中国人観光客の誘致に積極的で、中国に観光事務所を開設。スイスのスキー場では、シュイのような中国語を話せるスキーインストラクターを雇って、中国人観光客向けの教室も開いている。

 シュイはスキーと英語の試験を受けて合格し、13年12月に6人の仲間と一緒にスイスへ向かった。そのシーズンの成功を受けて、シュイたちは今年もスイスにやって来て指導を行っている。

 ここ数年、スイスにとって中国人観光客の重要性は増している。政府の統計によれば、09年、11年、12年の観光客数は、欧州から訪れる人々が減ったために落ち込んだ。欧州の景気低迷が原因であり、スイスは域内でも最も高額な観光地の1つだ。

 さらに今年に入り、スイス国立銀行(中央銀行)が、スイスフランの対ユーロ上限撤廃を発表したことにより、スイスフランが高騰した。

 上限撤廃の発表以来、「静まり返っている」と、アルプス地方にある村グリンデルワルトのホテルオーナーは言う。予約のキャンセルや値下げ交渉の問い合わせが相次いだ。普通なら、イギリスやドイツ、イタリアなどから直前の申し込みが数多く入る時期なのだが。

 しかし、中国人観光客は違う。まず中国人はかなり前もって休暇の計画を立てる。つまり、直前で為替の動きがあっても、予約をキャンセルする可能性は低い。

 また中国人観光者にとって、スイスはヨーロッパ周遊旅行の一部でしかない。欧州中央銀行(ECB)が量的緩和を実施してからユーロ安となり、スイスの旅費が高くなってもヨーロッパ旅行の全体料金としては安価になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中