最新記事

ベネズエラ

ロシアだけじゃない原油安でデフォルトしそうな国

原油価格下落で大打撃を受けたマドゥロ大統領が最大の融資国・中国やOPEC諸国に支援要請の旅に

2015年1月6日(火)18時25分
ブリアナ・リー

トップセールス 自ら動かざるを得なくなったベネズエラのマドゥロ大統領 Carlos Garcia Rawlins-Reuters

 南米の産油国ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は今週、中国やOPEC(石油輸出国機構)加盟各国を歴訪する旅に出発した。目的は、石油価格の下落によって破綻寸前に陥ったベネズエラ経済を支援してもらうことだ。マドゥロは出発直前のテレビ演説で今回の訪問は「石油価格の下落で歳入減にあえぐわが国にとって極めて重要」と国民に訴えた。

 OPEC加盟国のうち具体的な訪問国の名は言及しなかったが、石油価格回復のために加盟国同士協力して戦略を練ると語った。

 マドゥロが訪問する中国は、ベネズエラにとって最大のスポンサーで、07年以降の融資額は500億ドル近くにのぼる。ベネズエラはお返しに1日当たり50万バレル以上の石油を中国に供給しており、うち3分の2が中国への借金返済にあてられている。

 ベネズエラのコンサルタント会社エコアナリティカによれば、2月に期限切れとなる40億ドルの融資は継続してもらえそうだが、「中国が融資を増額する可能性については懐疑的」という。

 マドゥロは中国で習近平(シー・チンピン)国家主席と会談するほか、今週北京で行われる中南米カリブ海諸国共同体の会合にも出席する。

ささやかれるデフォルト危機

 原油安は輸出の95%を石油に頼るベネズエラ財政を直撃している。原油価格は過去6カ月で50%以上下落し、14年末には1バレル=46.97ドルを記録した。昨年11月のOPEC総会では、生産を削減して価格を引き上げることを主張したものの、失敗。そうでなくても同国ではインフレ率が63%に達し、先週は政府が景気後退を認めた。

 昨年夏に原油価格が下落を始める以前から、専門家の間ではベネズエラのデフォルト(債務不履行)危機がささやかれてきた。現に外貨準備は急速に減っており、12月には格付け会社フィッチレーティングスがベネズエラ国債の格付けをBからCCCに引き下げ、ブルームバーグは同国が15年末までにデフォルトに陥る確率は97%だと報道した。

 マドゥロは外国メディアによるデフォルト予測はいたずらに「経済戦争」をあおるものとして火消しに躍起。そうこうするうちにマドゥロの支持率は下落を続け、12月には過去最低の22%にまで落ち込んでいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中