最新記事

ネット企業

買ってはいけないグルーポン株

売り出された同社株が、スパやヨガの半額クーポンのようにお買い得と思ったら大間違い

2011年12月7日(水)16時45分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

デビュー 華々しく上場したが、経営の先行きは不透明

 先週米ナスダックに上場したクーポン共同購入サイト「グルーポン」は、一時はIPO(新規株式公開)価格20ドルを50%上回る値を付けた。果たして同社の株は、スパやヨガ教室の半額クーポンと同じくらい「お買い得」なのか。

 短期的な答えは「ノー」。そして長期的な答えは──絶対に手を出してはいけない。グルーポンのサイトは実に魅力的で賢い仕組みに見えるかもしれないが、同社の株は隠れたリスクを山ほど背負っているのだ。

 最大の問題はグルーポンという会社が、初期に出資したひと握りの投資家が私腹を肥やす道具になっていることだ。08年11月の創業以来、ベンチャーキャピタルから調達した11億ドルのうち、9億4200万ドルを内部関係者に支出している。10年4月に調達した1億3000万ドルも、会社の資金となったのはわずか1000万ドル。残りの大半は、初期の投資家2人と彼らの妻が経営する企業に流れた。

 元アナリストのヘンリー・ブロジェットによると、運転資金が赤字(保有する現金より借金のほうが多い)でも成り立っているのは、顧客からクーポン購入代金を徴収し、同社の取り分を差し引いて提携店や企業に支払うまでに60日間の猶予があるから。成長を続ける限り新しい入金を支払いに回せるが、成長が鈍ると危うくなりかねない。

 IPOを前にグルーポンの時価総額は300億ドルとも言われたが、現在は100億ドルを超える程度とみられる。景気後退の影響だけでなく、米証券取引委員会に提出した上場計画の中で、特殊な会計手法により営業利益を事実上「水増し」していたことも大きな要因だ。

 11年第3四半期は広告費や顧客獲得コストを大幅に削減し、収支をほぼとんとんに抑えた。これを採算の取れる大企業に成長する兆しとする見方もある一方で、広告費が削減されるにつれて成長が鈍っているとも指摘されている。

 グルーポンの独壇場だったクーポン市場にはライバルも出現し、グーグルやアマゾンなど大手からの圧力も高まりそうだ。世界進出は既に苦戦しており、中国での合弁事業は第3四半期に収入210万ドルに対して4640万ドルの損失を計上した。

 スカイダイビングの体験レッスンの半額クーポンはお買い得かもしれないが、グルーポン株は見送るのが賢明だ。

[2011年11月16日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、サウジ皇太子と会談 F35売却承認 防

ワールド

エプスタイン文書公開法案、米上下院で可決 トランプ

ワールド

米、国境警備隊をルイジアナ・ミシシッピ州に来月派遣

ワールド

米地裁、テキサス州の選挙区割りを一時差し止め 共和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中