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バイデン大統領が示したIPEF(インド太平洋経済枠組み)に込められた壮大なビジョン
バイデン政権は、インド太平洋経済枠組み(IPEF)で何をしようとしているのか...... REUTERS/Jonathan Ernst
<バイデン政権は、インド太平洋経済枠組み(IPEF)で何をしようとしているのか、TPPとはどこが違うものなのか......>
バイデン大統領がインド太平洋経済枠組み(IPEF)の立ち上げ発表の場に「東京」を選んだことはバイデン政権の日本重視姿勢が鮮明になった。そして、この枠組みは参加国にとって経済成長の恩恵をもたらすとともに、それ以上の可能性を秘めた壮大なビジョンだ。
日本ではIPEFとTPPを同列に並べて「米国はIPEFではなくTPPに復帰すれば良いではないか」という声も多い。しかし、これはバイデン大統領が掲げるIPEFが持つ壮大なビジョンの本質を捉えたものではないと考える。
バイデン政権は不思議なことにIPEFを「交渉」と呼び続け、つい昨日も、熟練した貿易交渉官を議論のリーダーに抜擢している。ただし、バイデン政権がIPEFでの交渉を通じて何を実現しようとしているのか。この点について詳細はいまだ知らされていない。
そこで、本稿ではバイデン政権がIPEFで何をしようとしているのか、TPPとはどこが違うものなのか、について分析していきたい。
価値観を共有する国々の経済安全保障の枠組み
IPEFが柱として掲げる内容は、「デジタル経済を含む貿易」「半導体供給などのサプライチェーン強化」「質の高いインフラ及びグリーン投資」「公正な経済を促進するための税制・汚職対策」などである。
たしかに、個々の柱についてはバイデン政権発足以来、日米首脳会談などでも議論されてきた内容であり、それらの政策自体は目新しいものではない。しかし、この4つの柱を含めたパッケージがインド太平洋地域の新たな経済連携の枠組みを示したことの政治的インパクトは大きい。
バイデン政権がIPEFで打ち出した内容は、経済の枠組みや安全保障の枠組みを超えた政治的な枠組みと捉えるべきだろう。つまり、自由主義・民主主義の価値観を共有する国々の経済安全保障の枠組みと言える。
TPPは高度なレベルで統合された経済連携協定である。ただし、直近で中国がTPPに参加申請を行うことが可能であることからも明らかなように、TPPには安全保障の要素が十分に含まれているわけではない。そのため、TPPはRCEPのような中国主導の経済枠組みと対比して語られることは妥当だ。
一方、IPEFが重視している諸々の経済安全保障の枠組みは、参加国同士の国家の政治的価値観の共有を前提としている。知的財産権保護、サプライチェーン、パンデミック対策、サイバーセキュリティなどは単純な貿易・投資の枠組みを超えた政治的価値観の共有が先にないと成立しない。そのため、IPEFの枠組みはTPPとは全く異なるEUのような政治的価値観を制度で担保する政治同盟を目指す枠組みと言えるだろう。当然であるが、IPEFの枠組みに中国が入ることは全く想定されていない。
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