コラム

バイデン政権のサプライチェーン見直し計画は、対中国戦略かつ国内選挙対策

2021年05月14日(金)16時30分

民主党にとって利権誘導政策でもある

そして、実はバイデン政権及び民主党にとって半導体産業振興政策は非常に価値が高い利権誘導政策となっている。下記の地図は米国における半導体産業の集積地を記したものであるが、一部を除いて民主党が選挙に強い「青い州」に集中している。また、フロリダ、ノースカロライナ、アリゾナ、テキサス、ミネソタなどの民主党・共和党の勢力が拮抗している接戦州も既存立地州に含まれている。

産業集積の観点から従来までの集積地周辺に新規投資も集約されることは容易に想定される。それは半導体産業振興のための巨額予算が民主党優勢の州に流れ込むとともに、大統領選挙で重要な接戦州に投下されることを意味する。

watase20210514a.jpg

「2020 STATE OF THE U.S. SEMICONDUCTOR INDUSTRY」Semiconductor Industry Associationから引用

誘致対象となる州に対して海外から有力な半導体企業が進出することで、バイデン政権は同誘致などから生まれる雇用増加などを自らの手柄として強調するだろう。これは選挙時に票掘り起しと資金獲得で有利に働くことになるはずだ。(その誘致がトランプ政権下で進められたものであっても。)

また、民主党の牙城である北部ミネソタ州では国防総省から信頼性でお墨付きを与えられた純国産半導企業であるSkyWater Technology社が4月にナスダック上場を果たしている。同社はフロリダ州などでの工場展開も予定しており、今後バイデン政権下で急速に成長・発展するシンボリックな企業として知られるようになるだろう。(当然、同社は上述の半導体サミットにも新興企業にも関わらず参加している。)

サプライチェーンの見直しは、経済政策、国家安全保障政策と選挙対策

このようにバイデン政権によるサプライチェーンの見直しは、経済政策であり、国家安全保障政策であり、そして選挙対策にもなっている。経済力強化や国防力強化を図りながら、チャッカリと政治的基盤固めにも利用する、米国の抜け目ない政治の在り方は非常に興味深いものだ。米国の政策は常に国際情勢と国内情勢をリンクする形で分析をしていくことが重要だと言えるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平「断念せず」 引き続き関

ワールド

トランプ氏、27日にアイオワ州訪問 演説で生活費高

ワールド

ロシアとの高官協議、来月1日再開の見通し=ゼレンス

ワールド

トランプ氏、ミネソタ州知事と協議 地裁は移民摘発停
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 7
    中国、軍高官2人を重大な規律違反などで調査...人民…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story