最新記事
事故

飲酒運転事故が年間1万件超、ついに日本人観光客も犠牲に 韓国、交通事故の構造的問題点とは

2025年11月19日(水)16時25分
佐々木和義
日本人旅行客の母娘がはねられた事故現場の様子

日本人旅行客の母娘が信号無視の自動車にはねられた事故現場の様子 KBS News / YouTube

<わずか2週間で日本人関連の重大事故が3件発生。韓国で交通安全はなぜ機能しないのか>

近年、日韓両国間の旅行客の往来は大きく増加している。2024年の訪日韓国人数は881万7,800人で過去最高を記録し、国・地域別で1位となった。一方、訪韓日本人客数も前年比39.2%増の約322万人に達し、両国合計で約1,200万人が行き来する規模となった。

こうした交流の活発化に伴い、これまであまり表面化しなかったトラブルも増えている。その一つが旅行者が交通事故に巻き込まれるケースだ。2024年秋以降、韓国で日本人観光客や外国人旅行者が犠牲となる重大な交通事故が相次いで発生している。

相次ぐ重大事故

11月2日夜10時頃、ソウル市鍾路区の興仁之門(東大門)交差点で道路を横断中の日本人母娘が信号無視の自動車にはねられた。50代の母親は死亡し、30代の娘は肋骨を折る重傷を負った。運転していた30代男性の血中アルコール濃度は免許取り消し基準を超えており、警察は男性を飲酒運転と危険運転致死傷の容疑で逮捕。ソウル恵化警察署は11月11日、この男性を送検したと明らかにした。母娘は大阪から2泊3日の予定で韓国を訪問し、東大門市場でショッピングをした後、鍾路区駱山(ナクサン)公園の城郭道を見に行くところだったという。

東大門の事故に先立つ10月21日には、70代の運転手が運転していたタクシーがセンターラインを越えて対向車と衝突した。タクシーに乗車していた20代の日本人夫婦が骨折し、生後9カ月の娘は意識不明の状態で搬送された。運転手は当初、急発進が原因と主張したが、警察の調べに対し、ペダルを誤って踏んだことを認めたという。薬物使用や飲酒は確認されなかった。

10月25日にも江南区論峴洞(ノンヒョンドン)の交差点でカナダ人が死亡する事故が起きている。30代男性が泥酔状態で自動車を運転して横断歩道を渡っていた歩行者をはねた。30代のカナダ人男性が死亡、20代の韓国人女性が重傷を負った。江南警察は運転者を飲酒運転および特定犯罪加重処罰法上危険運転致死、同乗者を飲酒運転幇助の容疑でそれぞれ逮捕した。
韓国警察庁の発表による2024年の飲酒運転事故は1万1,037件で、76.1%に相当する8,396件が免許取り消し基準の0.08%を超えていたという。

事故現場に設置された花輪

日本人母娘がはねられた事故現場には周辺住民たちが白い花輪を飾り、亡くなった犠牲者を弔った(撮影=筆者)

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中