最新記事
イスラエル

崩れた信頼の再構築...イスラエル軍が挑むガザ戦争の「真の意味」

THE ‘PEOPLE’S ARMY’ AT WAR

2024年9月10日(火)14時40分
ラファエル・S・コーエン(ランド研究所上級研究員)

こうした油断は戦闘の中でも現れる。イスラエル人は誇らしげに、自国の士官は最前線で指揮を執っていると語る。ただし、このような勇敢さには代償が伴い、ガザ戦争のデータはそれを裏付けている。イスラエル軍がこれまでに戦闘で失った兵士の約4分の1を士官(中尉~大佐)が占めているのだ。

指揮官が戦場からいなくなると部隊が大打撃を受け、勇敢さが虚勢にすり替わりやすくなる。実際、イスラエル軍の内部告発者が通報した虐待行為は、その多くが兵士の卑しい本能が抑制されずに起きた出来事に関するものだ。


イスラエル軍は米軍と大きく異なり、米軍と大きく異なる戦争を戦う。彼らは文化も構造も、迅速かつ激しい戦闘を行うように設計されている。アメリカはイスラエルに節度と規律を求めているが、イスラエル軍は組織的に、その反対のベクトルに設計されているのだ。アメリカは冷静かつ客観的に戦略を進めたいかもしれないが、戦争の遂行を任された軍とその指導者たちにとって、この戦いは極めて感情的なものでもある。

イスラエルは既に、この戦争が24年いっぱい続くと予想しており、イスラエル史上最も長い戦争の1つになるだろうと表明している。超正統派ユダヤ教徒から退職者まで、イスラエル人のあらゆる層から志願兵が殺到していることは、イスラエルが軍との社会的契約の在り方を修正しようとしていることを示唆している。しかし、その新しい軍隊がどのようなものになるかはまだ分からない。

Foreign Policy logo From Foreign Policy Magazine

2024091724issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年9月17日/24日号(9月10日発売)は「ニュースが分かる ユダヤ超入門」特集。ユダヤ人とは何なのか/なぜ世界に離散したのか/優秀な人材を輩出してきたのはなぜか…ユダヤを知れば世界が分かる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ヒズボラ指導者、通信機器爆発は「宣戦布告」 イスラ

ワールド

南ア中銀、0.25%利下げ FRBに続き緩和路線

ビジネス

米中古住宅販売、8月は2.5%減の386万戸 価格

ワールド

ハリス氏とトランプ氏、全国で支持率拮抗 激戦東部州
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に高まる【新たな治療法】の期待
  • 2
    世界で最も華麗で高額な新高層ビルに差す影
  • 3
    岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高められる次期首相は高市氏だ
  • 4
    「ポケットの中の爆弾」が一斉に大量爆発、イスラエ…
  • 5
    米大統領選を左右するかもしれない「ハリスの大笑い」
  • 6
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 7
    「気持ち悪い」「正直言って変...」サブリナ・カーペ…
  • 8
    地震の恩恵? 「地震が金塊を作っているかもしれない…
  • 9
    浮橋に集ったロシア兵「多数を一蹴」の瞬間...HIMARS…
  • 10
    「トランプ暗殺未遂」容疑者ラウスとクルックス、殺…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢な処刑」、少女が生き延びるのは極めて難しい
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    キャサリン妃とメーガン妃の「ケープ」対決...最も優…
  • 5
    クローン病と潰瘍性大腸炎...手ごわい炎症性腸疾患に…
  • 6
    【クイズ】自殺率が最も高い国は?
  • 7
    北朝鮮で10代少女が逮捕、見せしめに...視聴した「禁…
  • 8
    ロシア空軍が誇るSu-30M戦闘機、黒海上空でウクライ…
  • 9
    エリザベス女王とフィリップ殿下の銅像が完成...「誰…
  • 10
    ウィリアムとヘンリーの間に「信頼はない」...近い将…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 3
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 4
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 5
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 6
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 7
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 8
    止まらない爆発、巨大な煙...ウクライナの「すさまじ…
  • 9
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 10
    ロシア国内クルスク州でウクライナ軍がHIMARS爆撃...…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中