最新記事
ロシア

クルスクのウクライナ占領地に絨毯爆撃を── 「住民はそのために避難した」ロシア元国会議員

Russian official calls for 'carpet bombing' of Kursk

2024年8月22日(木)15時28分
イザベル・バンブルーゲン
ウクライナ軍の攻撃を受けるクルスク州の町

ウクライナ軍の激しい越境攻撃が続くロシア西部クルスク州の町(8月20日) 95th Air Assault Brigade/Handout via REUTERS

<ウクライナ軍がロシア領内で攻撃を続けるのを見かねたロシア人エリートの間には核攻撃を求める「極論」も>

ウクライナ軍はロシア西部クルスク州への越境攻撃を続けており、作戦開始から2週間で同州の少なくとも92の集落を制圧したと明らかにしている。こうしたなかロシアのある政治家が国営テレビで、自身の出身地でもあるクルスク州への絨毯爆撃を呼びかけた。

【動画】ウクライナ「越境攻撃」で大混乱中...ロシア軍ヘリ、誤って味方を「爆撃」してしまう瞬間の映

ロシアの元国会議員ナターリャ・ナロチニツカヤは、ロシア国営第1チャンネルに出演して絨毯爆撃を呼びかけ、ロシアの独立系ジャーナリストによるテレグラムチャンネル「アストラ」が8月19日にその内容を共有した。

「クルスク州で起きたあらゆることを考えると、そのぐらいの報復を実行すべきだ!」とナロチニツカヤは主張した。「ウクライナ軍を包囲して、全てを破壊するべきだ。それには絨毯爆撃だ。その準備が進められていることを願う」

ナロチニツカヤの発言を共有した以下の投稿に付けられた英語の翻訳コメントによると、彼女は「数千人もの住民を避難させたのは、絨毯爆撃のために他ならないはずだ」と言っている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は19日、ウクライナ軍が同国北東部のスームィ州から国境を越えてロシア西部のクルスク州への攻撃を開始して以降、ロシアの領土1250平方キロメートルを掌握し、92の集落を制圧したと発表した。

核攻撃も選択肢

越境攻撃の規模はかなり大きく、ウクライナ軍は8月6日に越境攻撃を始めてからこれまでにクルスク州で制圧したロシア領の面積が、ロシア軍が2024年に入ってから制圧したウクライナ領の面積を上回るという。

ロシアの領土が外国の軍の侵略を受けるのは、第二次大戦後初めてのことだ。クルスク州では大勢の住民が自宅からの避難を余儀なくされている。

本誌はこの件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

ナロチニツカヤの「絨毯爆撃」発言に先立ち、ロシアのプロパガンダ記者であるセルゲイ・マルダンは国営テレビのトークショー「ソロビヨフ・ライブ」の中で、クルスク州への核攻撃をほのめかしていた。

マルダンは、もしもロシアがクルスク州への越境攻撃の報復として核兵器を使用すれば、世界は「動揺し、憤る」だろう。しかし大衆は、最終的にはそれが合理的な判断だったと理解するだろう、と次のように述べた。

「過去2年の間、ロシアが核攻撃を行うことなど不可能だと散々議論されてきた。それがどのような結果を招くのか、西側はもちろん、グローバルサウスも敵に回すことになると。だが現在の状況を考えれば、少しは動揺し憤ったとしても、全体としては『合理的な対応だ』と言うだろうと個人的には確信する」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

香港の高層複合住宅で大規模火災、13人死亡 逃げ遅

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中