最新記事
古生物学

テネリフェ島で発見された70万年前のトカゲ化石、驚異の保存状態

Amazingly Preserved 700,000-Year-Old Lizard Fossil Discovered

2024年7月8日(月)12時50分
イザベル・キャメロン
スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島 Hendrik Cornelissen-Unsplash

スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島 Hendrik Cornelissen-Unsplash

<テネリフェ島の砂岩から、保存状態が極めて良好な巨大トカゲの化石が発見された>

スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島で、70万年前のトカゲの化石が、骨格がつながったままの極めて良好な保存状態で見つかった。

【動画】驚異の保存状態...テネリフェ島で発見された70万年前のトカゲ化石

研究者はこの化石について、カナリア諸島に人類が到達するはるか以前に生息していた絶滅種の巨大トカゲ「ガロティア・ゴリアテ(Gallotia goliath)」の可能性があると見ている。

現役を引退した植物学者のアルノルド・サントス-ゲラが、驚くほど保存状態が良好なトカゲの化石に遭遇したのは2年前、カタツムリの殻を探していた時だった。

この標本が見つかった重さ19キロの砂岩には、もう1匹のトカゲ(恐らく小型あるいは幼体)の化石も含まれていたが、こちらは保存状態がかなり悪かった。

この2匹は砂丘で一緒に死んだのだろうと研究者は見ている。

大きい方のトカゲは保存状態が極めて良好で、骨格がバラバラにならずに生きていた時の姿を保っていた。突然死んで砂に埋まったために、腐敗することも餌にされることもなかったと思われる。

サントス-ゲラはテネリフェ島にあるラ・ラグーナ大学の古生物学者カロリーナ・カスティージョ-ルイスに連絡を取り、同大で標本のスキャンとクリーニングを行った。今後さらに詳しい調査を予定している。

大きい方の化石は、頭蓋骨をデジタルで再現してカナリア諸島の別の絶滅種のトカゲや生きているトカゲと比較する。

骨格の特徴を詳しく分析することで、この標本がガロティア・ゴリアテなのか、それとも全く別の種なのかを見極める。

ラ・ラグーナ大学は、近くのエル・イエロ島で見つかったさまざまなトカゲの化石のコレクションを所蔵している。化石は4000年~1万5000年前のもので、保存状態の良い歯の付いた顎の骨格や脚の骨格などが、比較研究用に綿密にカタログ化されている。

新しい標本は保存状態が極めて良好なため、断片から推定しなくても原形をとどめた化石を正確に測定でき、比較がしやすいとカスティージョ-ルイスは話す。

今回の発見は、先史時代のカナリア諸島の野生生物の解明に役立つとともに、この地域の古生態学を研究する手がかりにもなる。骨格が保たれていることで、そうした古代爬虫類の形態や推定される行動を調べることができ、進化と順応に関する理解が深まることが期待される。

今後はこの化石の解剖学的特徴を詳しく調べ、生物多様性とカナリア諸島で起きた環境の変化に関する研究に役立てる。

(翻訳:鈴木聖子)

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平案、西側首脳が修正要求 トランプ氏は

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中