最新記事
欧州

「勢力図が塗り替わる」ガザ侵攻に揺れる欧州議会選、緑の党から新興左派政党への支持変更も

2024年6月7日(金)19時29分

社会党の欧州議会選有力候補、ラファエル・グラックスマン氏はロイターに「LFIは暴力と連携しているが、これは許されることではない」と語り、自身が世論調査で支持率第3位に浮上したのはLFIと距離を置いたことが一因だと分析した。

<歴史的背景>

ドイツでは親パレスチナの新興政党が、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)に対する同国の歴史的責任を理由にイスラエル支持を堅持してきた連立与党、ドイツ緑の党と社会民主党(SPD)の支持層を浸食している。

こうした新興政党には左派のMera25に加え、DAVAやBIGなど社会的保守のグループや、欧州統合懐疑派のBSWなどが含まれる。

イスラエルとの緊張関係がフランコ独裁政権時代にまで遡るスペインでは、政府によるパレスチナ国家承認が、連立与党である社会労働党(PSOE)と左派政党スマールへの支持を支えている。

マドリード・コンプルテンセ大学のダビッド・エルナンデス教授(国際関係論)は「パレスチナ問題はスペインの政治的議論の中心になった」と語った。

<マイノリティ有権者が鍵>

欧州議会選では、投票率が鍵を握るかもしれない。

ラドバウド大学のアザバール教授は、欧州議会選では往々にしてマイノリティの投票率が全体を下回るが、今回はガザ問題が投票の動機になる可能性があると指摘した。

ドイツ新興政党DAVAを率いるテイフィク・エズカン氏は、自身の政党はこれまで存在しなかった抗議票の受け皿になるとロイターに語る。大半のドイツ人なら、「よし、抗議のために(極右の)AfD(ドイツのための選択肢)に投票しよう」と言えるが、「イスラム教徒はそういうわけにいかない」からだ。

デュースブルク・エッセン大学政治学研究所が12月に行った調査によると、ドイツのイスラム教徒の3人に1人は、どの政党も自分たちを代表していないと感じている。

フランスでも似たような状況が起きている。モロッコとフランスの国籍を持つシェフ、チャニマ・タヒリ・イボラさん(34)は、欧州議会選挙で投票したことはないが、今回は極左政党LFIの候補者でパレスチナ系のリマ・ハッサン氏に投票するつもりだ。

「リマへの投票は抗議の行為だ。LFIの計画を全部知っているわけではないが、彼女や他のメンバーがパレスチナについて言っていることは正しい」とイボラさんは語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル指数下落、雇用統計は強弱混合 失

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、経済指標を精査 エ

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中