最新記事
ミサイル

半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と見せかけてウクライナを実験場にしている?

What Is the KN-23? North Korean Missile Shows 50% Failure Rate in Ukraine

2024年5月15日(水)15時44分
ジーザス・メサ
KN-24短距離弾道ミサイルの発射実験

北朝鮮、KN-24短距離弾道ミサイルの発射実験(平壌、2022年1月18日発表) KCTV vía / Latin America News Agency via Reuters Connect

<武器・弾薬不足に悩むロシアに北朝鮮が供与したミサイルは半数が空中で爆発。まさかミサイル実験のつもりか>

ロシアは、北朝鮮製の短距離弾道ミサイルをウクライナの戦場に配備しているが、このミサイルは失敗率が著しく高いと、ウクライナ当局は言う。

ウクライナ検察庁は、2023年12月〜2024年2月に発射された北朝鮮製ミサイル約50発のうち、21発の破片を回収・分析した。

その結果、これらのミサイルの約50%が、意図した目標に到達しなかったことがわかった。

【写真】金正恩に「すり寄る」プーチンの弱々しい態度/過去のプーチンが見せた「真逆」の態度

アンドリー・コスチン検事総長は5月第2週、ロイターの取材に対し、「北朝鮮製ミサイルの約半数は、プログラムされた軌道を外れ、空中で爆発した。そのようなケースでは、破片は回収されなかった」と述べている。

正式には「火星11」と総称される固体燃料式弾道ミサイルKN-23とKN-24は、2023年12月からロシアによって配備され、ウクライナ南東部ザポリージャ州の爆撃に初めて使用されたと伝えられている。また2024年2月はじめには、首都キーウの攻撃にも使用されたようだ。

ウクライナ当局によれば、これらの攻撃で、少なくとも24人の民間人が死亡し、100人以上が負傷した。検察庁によれば、もしミサイルの精度がもっと高ければ、犠牲者はさらに増えていた可能性があるという。

約50発のミサイルは、ロシア西部のベルゴロド州、ボロネジ州、クルスク州を含む複数地点から発射された。

空中で爆発

KN-23の射程は推定450〜600キロ。韓国と日本の一部を標的にできる長さだ。約500〜1000キロの通常弾頭または核弾頭を搭載可能だ。

高度な機動性を謳っているが、その精度には疑問が残る。米戦略国際問題研究所(CSIS)は、KN-23の準弾道軌道と操作可能なフィンが、ミサイル防衛システムによる迎撃を複雑にしていると指摘する。しかし、照準を合わせるための誘導システムの精度はまだ不確かだ。

この精度の低さは、ウクライナでも確認されている。検事総長のコスチンは2月、「これまでに発射された24発のうち、比較的正確に命中したのは2発で、クレメンチュークの製油所と、カナトヴェ空軍基地の技術施設だ。残りは空中で爆発したか、ハルキウ州の住宅地を直撃した」と述べている。

北朝鮮の弾道ミサイルがウクライナに投入されたことで、ロシアと北朝鮮の軍事協力に関して重大な懸念が生じている。これらの北朝鮮製ミサイルは、ロシアのミサイル「イスカンデルM」と類似していることから、ロシアの支援を受けて開発されたのではないかと指摘する専門家もいる。

さらに悪いことに、ここへきて、北朝鮮の金正恩政権は、ロシアのウラジーミル・プーチン政権に協力すると見せかけて、ウクライナ戦争を自国兵器の実験場として利用しているのではないか、という懸念も高まっている。

コスチンはロイターに対し、ウクライナ検察は、ロシアと北朝鮮の協力範囲を明確にするため、ウクライナ東部の戦場におけるミサイルの使用を北朝鮮がどれくらい監視しているかを調査しているところだと語っている。
(翻訳:ガリレオ)

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中