最新記事
台湾

中国を何と呼ぶ? 台湾「新総統」頼清徳の就任演説はここに注目

2024年5月13日(月)19時05分
ロス・ファインゴールド
頼清徳

頼清徳はかつて自らを「台湾独立派」と明言していたが…… Alex Chan Tsz Yuk/Sipa USA-Reuters

<地政学的に最も重要な新指導者として、5月20日に就任。対中関係、経済政策で何を語るかを世界が注視している>

台湾では5月20日、頼清徳(ライ・チントー)新総統が誕生する。就任式で頼が何を語るのか、特に対中国政策について当日まで多くの臆測が飛び交いそうだ。

民主選挙で選ばれた全指導者の1期目と同様、頼も最大の望みは2028年の選挙で2期目の政権を勝ち取ること。だから16年5月20日の蔡英文(ツァイ・インウェン)現総統の最初の就任演説は、大いに参考になる。20年5月20日の蔡の2度目の就任演説も比較対象として有益だ。

頼の就任演説で注目すべき点は以下の5つだ。

①台湾独立

17年9月26日、当時行政院長(首相)だった頼は、立法院(国会)で自らを「実務的に働く台湾独立派」と表現した。就任演説でも同じ表現を繰り返すのか。この発言は中台関係をめぐる頼の最も有名なコメントだ。

行政院長時代と違い、総統の立場でこれを言うのは容易ではない。アメリカの圧力と中国の反応に対する懸念を考えれば、同じ発言を繰り返すのは不可能だ。代わりに中台関係に関する蔡の路線を継承して「現状維持」を強調する可能性が高い。

②中国への言及

「台湾独立派」という立場を再度表明できない以上、頼は中国と台湾を別々の国として表現するほかの方法を見つける必要がある。中国を「対岸」や「大陸地区」などと呼んでも、双方ともに相手方に対する主権を有していない、と強調する目的は達成できない。

20年の蔡の就任演説では、北京語で「対岸」とした部分が、英語版では「China」と訳されていた。蔡の演説で中国に直接言及した部分はこれだけ。頼にとって簡単な解決策は、演説で中国を一貫して「China」と言及することだろう。

③「中華民国」への言及

元旦や国慶節などで総統が重要演説を行うとき、記者やコメンテーターは必ず台湾を正式名称の「中華民国」と呼ぶ回数と「台湾」と呼ぶ回数を調べる。

例えば昨年10月、蔡の最後の国慶節演説では「中華民国」が5回、「台湾」が37回だった。頼もおそらく1、2回は「中華民国」に言及するだろうが、「台湾」を使う回数のほうがずっと多くなりそうだ。

④経済目標

蔡は16年の就任演説の多くを経済問題に割き、「経済構造の転換」を呼びかけた。蔡の経済政策は「将来を見据えたインフラ建設計画」「循環型経済」「5+2産業イノベーション政策」といった流行語を生んだ。

今年1月の総統選で経済問題が大きなテーマになったこともあり、この分野での頼の姿勢には強い関心が寄せられている。高齢者介護、住宅価格、低賃金など、重要な社会問題に就任演説でどれだけ言及するかは注目の的だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中