最新記事
学生運動

名門コロンビア大学の学生が建物占拠の強硬策、警官隊に排除される

Columbia Protesters Storm Hamilton Hall

2024年5月1日(水)16時10分
カレダ・ラーマン

コロンビア大学ハミルトン・ホールの前で反イスラエルの抗議を続けてきたデモ参加者たち(1月30日) Mary Altaffer/Pool via REUTERS

<停学になる危険を冒しても守りたかったものとは>

ニューヨーク市の名門コロンビア大学で、反イスラエル、パレスチナ支持の抗議運動をおこなっていた学生たちが、大学の建物を占拠。警官隊に排除された。

SNSの動画には、抗議者たちが4月30日早朝、大学構内のハミルトン・ホールのドアのガラスを破って侵入し、内側から封鎖する様子が映っている。

 

大学の建物占拠は、1968年にコロンビア大学で起きた有名な学生デモを想起させるものだ。1968年には公民権運動と反ベトナム戦争の抗議デモが行われ、ハミルトン・ホールを含む複数の建物が占拠された。

【動画】「パレスチナ支持」のデモ、全米の大学に拡大 学生たちは何を求めているのか

学生新聞「コロンビア・デイリー・スペクテイター」によれば、4月30日早朝、数十人の学生たちがハミルトン・ホールを占拠した。学生たちは、金属製のゲートやテーブル、椅子でバリケードを築いた。

学生たちに退去を求めたエリック・アダムズ市長は、デモ隊の多くはコロンビア大学の学生ではなく、外部から入り込んだ煽動者だと言った。

デモ参加者たちは、占拠した建物を「ヒンド・ホール」に改称しようと横断幕を掲げた。ガザでイスラエル軍の攻撃を受け、電話で救急隊員に助けを求めながら亡くなった6歳の少女ヒンド・ラジャブにちなんだ名だ。

【動画】コロンビア大学のデモ隊は、電話で助けを求めながら死んだガザの6歳少女の名前を呼んだ

キャンパス内にテントを張って抗議デモを行ってきた団体「コロンビア大学アパルトヘイト・ダイベスト(CUAD)」はインスタグラムへの投稿で、「この建物は解放された」と書いた。


コロンビア大学は4月18日、キャンパス内の広場に学生たちが設置したテント村を撤去するため警察に通報、100人以上の学生が逮捕された。以来、イスラエルとガザを統治するハマスの戦争に抗議する学生運動は全米の多くの大学に広がった。卒業式が近づいていることもあり、各大学はテントの撤去を求めている。交渉を続けている大学もあれば、学生が警察と衝突した大学もある。全米の逮捕者はすでに1000人近くに達している。

学生たちは大学に対し、イスラエルへの投資など経済的なつながりを断ち、ガザで侵攻を支援している企業と決別するよう要求している。現在の戦争は、ハマスが2023年10月7日、イスラエル南部を攻撃したことをきっかけに始まった。約1200人のイスラエル人が死亡し、約250人が人質として連れ去られた。イスラエル軍は直ちに報復攻撃を開始。AP通信が伝えたガザ保健省の情報では、ガザでは、3万4000人以上のパレスチナ人が殺害されている。

コロンビア大学のミノーシュ・シャフィク学長は4月29日、大学当局とデモ学生との交渉は決裂したと発表した。

シャフィクは声明で、「大学がイスラエルと関係を切ることはないが」と、前置きして述べた。「社会的責任のある投資に関する諮問委員会によって、学生からの新たな提案を迅速に検討する」

大学側は、期限までに退去しなければ停学処分もありうると脅したが、学生たちは4月29日午後2時という退去期限を無視した。大学の要請で、待機していた警官隊がキャンパスに入った。

(翻訳:ガリレオ)


20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中