最新記事
インタビュー

単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日本経済の現実...物価対策、移民政策への考えとは?

COMPLEX CHALLENGES AHEAD

2024年5月4日(土)20時51分
構成:トム・オコナー

米連邦議会で演説する岸田首相

米連邦議会で演説する岸田首相(4月11日) CHIP SOMODEVILLA/GETTY IMAGES

これらが、総理大臣として私の進めてきた主要な政策だ。では現時点で、私にとって最大のチャレンジは何か。それは経済であり、外交と安全保障に関する問題だ。

この30 年間、日本経済はデフレに苦しんできた。賃金が上がらず、物価も上がらず、投資も増えない状況だった。だが私は、総理大臣となって以来、一貫して「新しい資本主義」を推進している。賃上げを契機とした成長と分配の好循環を生み出し、それによって消費が拡大し、企業の投資意欲や賃上げ意欲がさらに高まることを目指す政策だ。

その結果、日本経済は30年ぶりに明るい兆しを見せている。賃金の上昇や民間投資の大幅な増加が見られる。株式市場も史上最高値を更新している。

この流れをしっかりと守り、日本がデフレから完全に脱却し、経済が成長志向の新たなステージへと向かうことを期待したい。

一方で外交や安全保障に目を向ければ、私たちは極めて不確実な状況にある。そのため、首脳レベルの外交を強化することになる。そしてこの外交を支える防衛力が必要だ。たとえ不確実な時期であっても、安定を実現するための役割を日本が果たせるようにしていく。

──防衛力に関して言えば、今の日本はその強化に向けた改革を進めている。なぜ、そうした改革が今の日本に必要なのか?

まず日本の安全保障環境について言えば、周囲を見渡すと核・ミサイル開発をしている国があり、軍事力を不透明な流儀で増強している国がある。また南シナ海や東シナ海では、力による一方的な現状変更の試みが見られる。それが現実だ。

このような状況を考えると、今の日本は第2次大戦が終結して以来最も困難で複雑な安全保障環境に直面している。この状況の下で、国民の命と生活を守らなければならない。

総理大臣に就任して以来、私は日本の国家安全保障戦略の大幅な見直しを行った。もちろん、その戦略の中でも平和を愛する国家としてのこれまでの歩みを変えるつもりはない。

しかし、この困難で切迫した安全保障環境の状況からすれば、まずは日本のために平和を守る環境を整えなければならない。だから外交と首脳レベルの交流を着実に進めていかなければならない。

わが国の基本的な立場を明確に示す一方、外交の足元を固めるためには自国の防衛力も強化しなければならない。その点を私は明確にした。そして防衛予算を対GDP比2%まで引き上げる方針を示し、反撃能力の保有とサイバーセキュリティーの強化に努めることも明言した。

また、九州・南西地域の防衛態勢を強化している。このように、防衛力強化に向けた取り組みを進めており、これを一歩一歩、着実に進めていきたいと思う。

国際情勢は複雑化している。どの国も単独で自国を守ることはできない。だから日本も、自国民の生命と生活を守るために自らの責任を引き受け、果たしていきたい。

しかし、それに加えて、この地域における抑止力と反撃能力を向上させるため、同盟国アメリカや志を同じくする国々、さらにはグローバルサウスも含め、外交政策を通じて連携を深めていきたい。これは非常に重要なイニシアチブだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中