単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日本経済の現実...物価対策、移民政策への考えとは?
COMPLEX CHALLENGES AHEAD
これらが、総理大臣として私の進めてきた主要な政策だ。では現時点で、私にとって最大のチャレンジは何か。それは経済であり、外交と安全保障に関する問題だ。
この30 年間、日本経済はデフレに苦しんできた。賃金が上がらず、物価も上がらず、投資も増えない状況だった。だが私は、総理大臣となって以来、一貫して「新しい資本主義」を推進している。賃上げを契機とした成長と分配の好循環を生み出し、それによって消費が拡大し、企業の投資意欲や賃上げ意欲がさらに高まることを目指す政策だ。
その結果、日本経済は30年ぶりに明るい兆しを見せている。賃金の上昇や民間投資の大幅な増加が見られる。株式市場も史上最高値を更新している。
この流れをしっかりと守り、日本がデフレから完全に脱却し、経済が成長志向の新たなステージへと向かうことを期待したい。
一方で外交や安全保障に目を向ければ、私たちは極めて不確実な状況にある。そのため、首脳レベルの外交を強化することになる。そしてこの外交を支える防衛力が必要だ。たとえ不確実な時期であっても、安定を実現するための役割を日本が果たせるようにしていく。
──防衛力に関して言えば、今の日本はその強化に向けた改革を進めている。なぜ、そうした改革が今の日本に必要なのか?
まず日本の安全保障環境について言えば、周囲を見渡すと核・ミサイル開発をしている国があり、軍事力を不透明な流儀で増強している国がある。また南シナ海や東シナ海では、力による一方的な現状変更の試みが見られる。それが現実だ。
このような状況を考えると、今の日本は第2次大戦が終結して以来最も困難で複雑な安全保障環境に直面している。この状況の下で、国民の命と生活を守らなければならない。
総理大臣に就任して以来、私は日本の国家安全保障戦略の大幅な見直しを行った。もちろん、その戦略の中でも平和を愛する国家としてのこれまでの歩みを変えるつもりはない。
しかし、この困難で切迫した安全保障環境の状況からすれば、まずは日本のために平和を守る環境を整えなければならない。だから外交と首脳レベルの交流を着実に進めていかなければならない。
わが国の基本的な立場を明確に示す一方、外交の足元を固めるためには自国の防衛力も強化しなければならない。その点を私は明確にした。そして防衛予算を対GDP比2%まで引き上げる方針を示し、反撃能力の保有とサイバーセキュリティーの強化に努めることも明言した。
また、九州・南西地域の防衛態勢を強化している。このように、防衛力強化に向けた取り組みを進めており、これを一歩一歩、着実に進めていきたいと思う。
国際情勢は複雑化している。どの国も単独で自国を守ることはできない。だから日本も、自国民の生命と生活を守るために自らの責任を引き受け、果たしていきたい。
しかし、それに加えて、この地域における抑止力と反撃能力を向上させるため、同盟国アメリカや志を同じくする国々、さらにはグローバルサウスも含め、外交政策を通じて連携を深めていきたい。これは非常に重要なイニシアチブだ。