最新記事
コミック

日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

BEHIND MANGA MANIA

2024年4月26日(金)18時05分
澤田知洋(本誌記者)

ラスベガスの格闘ゲーム大会EVOで『ストリートファイター6』をプレーする参加者たち

ゲームが北米でのオタク文化の礎を築いた(ラスベガスの格闘ゲーム大会EVOで『ストリートファイター6』をプレーする参加者たち、22年8月) JOE BUGLEWICZ/GETTY IMAGES

──それに対してなぜ日本の作品は映像から原作を読む流れができた?

いろいろ考えられるが、1つには日本の漫画は例えば『ONE PIECE』の原作なら尾田栄一郎さんが描いた作品を読めばよい、という分かりやすさが挙げられる。DCやマーベルは同一のヒーローが登場する「原作」が多くあり、どれを読んだらいいか迷いがちだ。ただ裏返すと、アニメになっていない日本の漫画は売れづらいという事情もある。

──集英社が「マンガプラス」というアプリ・ウェブサービスで週刊少年ジャンプの人気作を配信するなど、紙媒体以外での海外展開も日本の大手出版社は行っている。マンガプラスは22年時点の月間アクティブユーザー数が600万人に達しているという。こうしたサービスでは映像化されていない作品も読まれている?

基本的にウェブ展開でもアニメになった作品のほうが、食い付きが良いはずだ。紙の雑誌と同じように、軸となるアニメ化作品があり、そこから他の作品へと誘導していく、という構造になっているのではないか。

──マンガプラス(冒頭数話や最新話が無料)の読者は日本のファンほど電子書籍は購入せず、紙の単行本を購入することが多いという。これは海外では一般的な傾向か?

アメリカでの実態を考えれば、かなり納得感のあるデータだ。コレクターズアイテムとして紙の単行本で本棚を埋めたいファン心理がかなり強い。若いデジタル世代だからこそ物理的な商品への関心が高いこともあるだろう。だから中古本取引や転売も活発で、出版後すぐに高値が付く商品もアメコミより多い印象だ。『トライガン・マキシマム』の単行本に1冊135ドルの高値が付いていたのを見て驚いたことがある。

──日本の漫画のファンは若い世代が多い?

そうだ。(現在40~50代の)X世代かそれより若い層が大半だろう。中南米や欧州、アジアなどでは数十年前からアニメなどを通じて日本のカルチャーを受け入れる土壌が育ったが、北米では00年代までは広く浸透しているとはいえなかった。

だが、X世代以降の人々は「ファイナルファンタジー」シリーズや『ストリートファイターⅡ』など日本のゲームの世界的ブームの直撃を受けた世代。ケーブルTVを通してアニメを見たり、ネットを経由して日本のオタク文化に接することがあったが、ゲームに関しては北米の家電量販店でも必ずといっていいほどこれらの作品が売られており、そこで日本的なキャラクターの絵柄やけれん味のあるストーリーに初めて接した人は多いと思う。

この下地ができたところに近年、米最大の書店チェーンのバーンズ&ノーブルなどが大量に漫画を仕入れ始め、作品を気軽に購入できるようになった。それが北米の昨今の漫画ブームを準備したと考えている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中