「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景
NO HOPES FOR THE FUTURE
加えて、彼らの雇用をめぐる状況は、近年急速に改善されている。韓国における15~29歳の失業率は、17年の9.8%をピークに低下し、23年には5.9%になった。
背景に存在するのは、朝鮮戦争が休戦した1953年から60年代前半までの、ベビーブーマー世代の一斉退職である。日本における90年代後半から00年前半の就職氷河期世代の就職難が、その後の団塊の世代の退職で一掃されたのと同じ現象だ。
こうして見ると、韓国の若年層をめぐる状況は決して悲観的ではない。とはいえ同時に、肝心の韓国の若い人々自身が将来に積極的な展望を見いだせないでいるのも、世論調査などから明らかだ。
かつてとは異なり、就職先はそれなりにあり、労働条件も徐々に改善されている。彼らはどうして強い不安を感じているのか。
重要なのは、「今」の状況よりも、彼らが有する「未来」への展望が悪化していることだろう。民主化と経済成長の結果、韓国は豊かで平和な社会になった。
だからこそ、他国と比べても、今の彼らの生活に関わる数字は遜色がない。しかし、それは彼らの未来が保証されていることを意味しない。以前の韓国の人々にとって、目指すべきは先を進む先進国の姿であり、それこそが彼らの目標だった。
しかし、自らがその先進国の1つとなった今、彼らは目指すべきモデルを見失っている。
高度成長が続いた時代、人々は今の生活が苦しくても、未来の生活に希望を見いだすことができた。明日は今日よりも良くなるに違いない、そういう期待を当たり前に持つことができたからだ。
しかし、現在の若年層はそうではない。経済成長の鈍化は将来に対する期待を暗いものとさせ、彼らは未来への積極的な投資を躊躇することとなる。それこそが、彼らが結婚を先延ばしにし、子供を持つことを拒む方向へと導く。
こうして生まれる少子化現象は、結果として韓国の人々の未来に対する不安をさらに加速させる。人口減少が続けば、韓国経済は縮小し、その未来像はさらに暗いものになる。
未来に対する希望の消滅が少子化をもたらし、少子化がさらに未来への展望を暗いものとさせる。韓国社会はこうした負のスパイラルに入りつつあるように見える。