最新記事
イラン大使館攻撃

イスラエルによるイラン大使館空爆は「恐ろしいテロ」か「正当な軍事攻撃」か?

A Warning from Tehran

2024年4月8日(月)13時40分
トム・オコナー(外交担当シニアライター)

一方でアメリカは、中東全域での紛争につながりかねない行為には賛成できないと繰り返し表明してきた。アントニー・ブリンケン米国務長官はこの点を2日の声明でも確認したが、イスラエルを名指しすることは避けた。

「紛争の拡大を防ぐために各国と緊密に協議している。レバノンでもイラクでもシリアでも、紅海方面でもイエメンでもだ」。ブリンケンは訪問先のパリでそう語ったが、今回のイラン大使館攻撃に関しては「事実関係を確認中」とするにとどめた。

その一方、ブリンケンはレバノン情勢を念頭に、旧宗主国フランスとの協議を続けているとし、レバノンでの新たな紛争は「誰も、イスラエルも(シーア派民兵組織の)ヒズボラも、レバノンもイランも望んでいない」と強調した。

「抵抗の枢軸」を公然支持

ジョン・カービー米大統領補佐官(広報担当)も「ダマスカスで起きたことについて現時点で話せることはない」とし、アメリカの関与を否定するにとどめている。

レバノンやイラク、シリア、イエメンで活動するシーア派民兵組織、いわゆる「抵抗の枢軸」をイラン政府は公然と支持しているが、指揮命令系統の存在は否定している。

だがイスラエル軍は長年にわたり、イランとの関係が疑われるシリア国内の標的に対する非公然の空爆を繰り返しており、シーア派民兵組織はイランの事実上の前線基地だと非難してきた。

イスラエル政府は原則として、こうした空爆への関与を肯定も否定もしない立場だ。ただし一部の政治家や軍事筋が個々の攻撃への関与を認めることはある。

今回のイラン大使館攻撃に関して、イスラエル側は沈黙を守っているが、同じ4月1日にガザで民間支援団体ワールド・セントラル・キッチンのスタッフ7人の命を奪ったミサイル攻撃については率直に関与を認めている。

イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は民間人の被害に「心からの悲しみ」を表明し、どのような状況だったかを調査すると約束した。

ちなみにイランの国連大使エルシャディも2日の声明でこの事件に言及し、イスラエルは故意に民間人を標的にしていると訴えた。もちろんイスラエル軍はこうした主張を否定し、ハマスこそ非戦闘員を標的にしていると主張するが、当然のことながらハマス側は否定している。

エルシャディはまた、アメリカとその同盟諸国が中東危機の責任をイランに転嫁しようとする一方、イスラエルの身勝手な行動を野放しにしていると糾弾し、アメリカこそが紛争の拡大を画策していると指摘して、こう続けた。

「アメリカはイスラエルの現政権が犯した全ての犯罪に責任がある。ガザでの野蛮な大量虐殺行為は、アメリカの明確な同意と政治的・財政的・軍事的な支援、そしてパートナーシップなしには起こり得なかった」

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物9.5億ドル相当売却、米イラン停戦発表の数

ビジネス

日本の財政中長期試算、改善の余地ある=片山財務相

ワールド

薄氷の米・イラン停戦、パキスタンが夜通し奔走し合意

ビジネス

米シティ、AI活用で口座開設とシステム更新を迅速化
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 4
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 9
    アメリカとイランが2週間の停戦で合意...ホルムズ海…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中