最新記事
ウクライナ情勢

ロシア軍はもう「クリミア大橋を使っていない」──ウクライナ高官

Crimea Bridge Cut Off to Russian Military After Ukraine Strikes: Kyiv

2024年3月28日(木)15時50分
エリー・クック

ロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋(2023年7月17日) REUTERS

<ロシア本土からクリミアへの重要な補給路でプーチンのプロパガンダツールでもあるクリミア大橋が遂に堕ちた?>

ロシア軍はもうクリミア大橋を使っていないと述べている──ウクライナ政府はそう述べる。全長約19キロメートルのクリミア大橋はこれまで、ロシア軍がクリミア半島やウクライナ南部の部隊に兵器や弾薬を供給するための主な補給路として利用されてきた。

【動画】昨年10月にクリミアでロシア艦船をウクライナの水中ドローンが攻撃する現場とみられる映像

ウクライナ保安庁のバシーリ・マリュク長官はインタファクス・ウクライナ通信に対して、ウクライナ軍の攻撃により、ロシア軍の物資補給は途絶えていると説明。だが橋の構造上の安全性が確認されれば、軍事物資の補給が再開される可能性が高いとも述べた。

 

ケルチ大橋とも呼ばれるクリミア大橋は、ロシア南部のクラスノダール地方と、ロシアが2014年に併合したクリミア半島を結ぶ戦略的に重要な橋だ。ロシアとウクライナの間で2年以上にわたって続く戦争の中で、クリミア大橋は何度もウクライナ軍の標的にされ、ロシア当局によって一時閉鎖されていた。

マリュクがインタファクス・ウクライナに語ったところでは、ウクライナ軍が攻撃する前は毎日、兵器や弾薬を積んだ列車46本がクリミア大橋を渡っていた。だが現在では、一日に橋を渡る列車の数は5本のみで、そのうち4本が乗客を運び、残る1本は一般消費財を運んでいるという。

繰り返し標的に

「敵は現在、兵器や破壊手段の供給にクリミア大橋をまったく使っていない」とマリュクは述べ、だが橋の復旧が終われば「おそらく彼らは橋を使った弾薬の補給を再開するだろう」とつけ加えた。

本誌はこの件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。

ロシアは2023年8月、ウクライナ軍がクリミア大橋を複数のミサイルで攻撃したと発表。その前月には、爆発物を積んだウクライナ産の水上ドローン(無人艇)がクリミア大橋を攻撃していた。

2022年10月には、爆発物を積んだトラックがクリミア大橋を走行中に爆発。インターネット上で拡散された動画には、爆発によって破損した道路橋と鉄道橋が映っていた。クリミア大橋では2023年7月にも爆発があり、ウクライナが後に攻撃を行ったことを認めている。

マリュクは2023年11月、「クリミア大橋は崩壊する運命にある」と述べていた。

クリミア大橋は、ロシアがクリミア半島を一方的に併合した後直ちに建設された。2018年の開通時にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が自らトラックを運転して橋を通行。これによってクリミア大橋はロシアにとってのプロパガンダツールとなり、ウクライナにとっては軍事標的となった。

2月後半には、ウクライナ国防省情報総局のキーロ・ブダノフ局長がウクライナの一般市民に対して、クリミア大橋を使わないようにと遠回しに警告を発していた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中