最新記事
月面開発

ロシア、中国と共同で月面に原発設置を検討。プーチン「核兵器の宇宙配備」にも現実味?

Strategic Space Cooperation Between Russia and China Raises Alarm

2024年3月7日(木)19時07分
デービッド・ブレナン

モスクワ郊外のロケット・宇宙企業「エネルギア」センターを訪ねたプーチン(2023年10月26日) Sputnik/Grigory Sysoev/Pool via REUTERS

<中ロの宇宙協力の中でも今までになく野心的な内容で、西側の脅威になる。ロシアが開発中と言われる宇宙ベースの核を含む攻撃兵器での協力もありうる>

ロシアがウクライナで悲惨な戦争を起こし、西側諸国との対立を深めるなか、月面に原子力発電所を建設するというロシアと中国の計画が、中国はロシアと長期にわたって戦略的に連携するつもりではないかという疑念を生んでいる。

ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスのトップであるユーリー・ボリソフは3月5日、ロシアと中国は月面に原子力発電所を建設するプロジェクトを「真剣に検討」しており、いずれ月面居住の電力源になる可能性があると述べた。

 

米国のシンクタンク戦争研究所(ISW)は5日、この発表は「奇妙」ではあるものの、ロシアと中国の協力関係が深まる兆候かもしれないと分析した。

ボリソフによれば、このプロジェクトは「2033〜2035年のどこか」で実行される可能性があり、ロシアは「中国の同僚と、月面に発電装置を運んで設置する」ことになるという。

「これは非常に真剣な挑戦だ」とボリソフは言い添えた。「人が立ち会うことなく、自動モードで行われなければならない」。ボリソフによれば、ロシアは原子力を動力源とする配達車も検討しているようだ。

「私たちは宇宙タグボートの開発も進めている」とボリソフは述べている。「この巨大な構造物は、原子炉と高出力タービンのおかげで...軌道から別の軌道に大きな貨物を移送したり、宇宙ごみを回収したりと、多くの用途に使うことができる」

宇宙ではロシアはまだ強い

ISWはボリソフの発言について、「中ロの関係強化の兆しであり、中国はロシアと長期にわたる戦略的パートナーシップを育むことで西側諸国に対抗し、場合によっては西側諸国を脅かそうとしているのだろう」と記している。

米統合軍のひとつである宇宙コマンドの司令官を務めるスティーブン・ホワイティング大将は5日、2024年の宇宙サミットで、ロシアは今も宇宙で「手ごわい」競争相手であり、アメリカに「自己過信」に陥らないよう警告した。

ロシアと中国は、以前から宇宙プロジェクトで連携しているが、ボリソフが謳っているような野心的なプロジェクトはこれまで存在しなかった。

ロシアは2023年11月、中国と2027年までの宇宙協力協定を締結した。国際月面研究ステーション(ILRS)を開発建設し、共同で月面を探査するというものだ。

この協定の1年前には、ロスコスモスと中国国家航天局が、ロシアと中国の6都市に、ロシアのGLONASS衛星測位システムと中国の北斗衛星測位システムを共同で設置するという協定を結んでいる。

ISWは、ロシアが「宇宙ベースの衛星攻撃兵器」、おそらくは核弾頭を搭載したものを開発中と伝えられていることから、衛星に関する中ロの協力は特に憂慮すべきことだと指摘する。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中