最新記事
ウクライナ戦争

もう取り返しがつかない?ロシアがウクライナ侵攻で犯した5つの失策

Russia's Top 5 Blunders in Two Years of Ukraine War

2024年2月27日(火)17時39分
デービッド・ブレナン

■3)善意のしるし

最前線で停滞している現在の戦況は、流動的で機械化された戦闘が数週間にわたって繰り広げられ、領土が大きく変動した2022年の戦闘とは大違いだ。4月にロシアがキーウから撤退した後、両陣営は戦闘を再開し、ウクライナが東部ハルキウ地方と南部ヘルソン地方で大きな勝利を収めた。

ウクライナが南部からヘルソンに攻め込み、最終的にはドニプロ川の川岸まで攻勢をかけることは、以前から予告されていた。その漸進的な攻勢は8月に始まった。

北東部ではウクライナがハルキウの東で奇襲攻撃を仕掛け、比較的薄いロシアの防衛線を突破して650平方キロ以上の領土を解放した。ウクライナの攻撃隊は、その進撃の速さゆえに、自軍の補給線を追い越すことさえあった。

これは南部での成功につながり、ウクライナ軍は11月にヘルソンに到達し、市をロシアの支配から解放した。

ロシア政府によれば、4月のキーウ、9月のハルキウ、11月のヘルソンと、ロシア軍の敗北と撤退はすべてロシア側の「善意のしるし」だった。6月の黒海の要衝ズメイヌイ島(スネーク島)の放棄もそのひとつだったという。

■4)「プーチンの料理人」

ロシアのウクライナ侵攻は、ロシア政府内のパワーバランスをも動かし、権力を振るう新たなルートをプーチンの側近たちにもたらした(それを使いこなすだけの冷酷さとリソースがあればの話だが)。

この2年間のモスクワにおける泥沼の心理戦から生まれた物語の中でも最も衝撃的だったのが、エフゲニー・プリゴジンの台頭だった。彼はケータリング業で財をなしたオリガルヒ(新興財閥)で、「プーチンの料理長」というあだ名で呼ばれていた。

民間軍事会社ワグネルを率いていたプリゴジンは、軍閥の長といった存在になるとともに、戦況に大きな影響力を及ぼす立場となった。ワグネルは2022~2023年にかけて東部ドネツク州での激しい戦闘を主導し、2023年5月にはソレダールやバフムトを攻め落とし勝者となった。

セルゲイ・ショイグ国防相やバレリー・ゲラシモフ参謀総長との激しい権力闘争を経て、プリゴジンは現実主義者で民衆の味方というイメージを作り上げることができた。そして、主戦論者ナショナリストや、世論調査によれば、多くのロシア人の支持を得るに至った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

SBI新生銀行、東京証券取引所への再上場を申請

ワールド

ルビオ米国務長官、中国の王外相ときょう会談へ 対面

ビジネス

英生産者物価、従来想定より大幅上昇か 統計局が数字

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中