最新記事
北朝鮮

<衛星画像>北朝鮮が旧ソ連機をAWACS(早期警戒管制)機に「改造中」の現場を発見

Satellite Photo Points to North Korea's New Russian-Made Radar Plane

2023年12月19日(火)18時28分
アーディル・ブラール
NATO軍のAWACS機

ドイツのガイレンキルヒェン航空基地を飛び立ったNATO軍のAWACS機(2014) REUTERS/Francois Lenoir

<もし成功すれば、北朝鮮の偵察範囲は拡大し、防空能力も進化する>

北朝鮮の金正恩政権が、ロシア製の軍用輸送機を改造し、強力なレーダーを備えた「空飛ぶ司令塔」へと変貌させようとしていることが、最新の衛星画像で明らかになった。実現すれば、ミサイル実験能力と偵察能力が増強されるだろう。

改造中とみられるのは、ソ連時代に設計された輸送機「Il-76(イリューシン76)」だ。発見したのは、オープンソースインテリジェンスのアナリストで、11月30日に平壌国際空港に駐機されている同機を発見した。

北朝鮮の狙いがわれわれの推測通りであれば、北朝鮮の軍事力は著しく進歩することになり、偵察範囲は拡大する。


ジェームズ・マーティン不拡散研究所の研究員デッカー・エベリスによると、問題のIl-76は、平壌国際空港の整備格納庫横に駐機されていた。衛星画像データ提供会社プラネットによる衛星画像を分析したエベリスは、Il-76の胴体上部に、巨大な構造物が新たに追加されていることを発見した。

エベリスの説明によると、追加された構造物は、回転式のレーダードーム、通称ロートドーム用のマウントである可能性がある。一般的には、早期警戒管制機(AWACS機)に搭載される空中警戒管制システムの一部として建造されるものだ。

9月下旬に始まったか

早期警戒管制機は、米空軍がボーイング製の「E-3セントリー」を運用しており、空中の敵機を探知したり、ミサイルなどの発射体を追跡したりする。

アメリカの北朝鮮専門ニュース/分析サイト「NKプロ」は、こうした改造作業が11月に行われていたことを確認した。「この作業は、9月下旬に始まった可能性がある。ちょうどその頃、同機の駐機場所周辺に防壁が立てられ始めたからだ」と、NKプロのサイトには書かれている。

大型輸送機のIl-76は、1970年代にソ連空軍に導入されて以降、中国を含む世界各国の政府に広く採用されてきた。北朝鮮には国営高麗航空にIl-76を3機を供給したが、早期警戒管制機に改造されているのは1機のみのようだ。

「ほかの2機はここ数カ月、改造中の輸送機が駐機されている場所の隣にある整備格納庫に置かれるようになった。しかし12月13日現在は、どちらも屋外に駐機している」と、NKプロは報じている。

もし北朝鮮軍にAWACS機が導入されれば、同軍の防空網は大幅に強化される可能性がある。同軍の防空網はいまのところ、古いタイプの移動できないレーダー基地に依存していると、エベリスは述べる。

北朝鮮が11月22日、偵察衛星(万里鏡1号)の打ち上げに初めて成功してから、朝鮮半島ではちょうど緊張が高まっている。

韓国の情報機関は、北朝鮮の偵察衛星打ち上げについて、ロシアの支援を受けている可能性がある、と述べた。

(翻訳:ガリレオ)

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中