900キロを実際に走行 ...インドシナ半島の大動脈「南部経済回廊」から見たASEANの連結性強化
南部経済回廊上のつばさ橋
<JICAが20年以上前から整備に協力してきた「南部経済回廊」は、約1千キロにわたってインドシナ半島南部を横断する交通と物流の大動脈だ。そのうち、ベトナム・ホーチミンからカンボジアを経てタイ・バンコクに至る900キロをJICA職員らが実際に走行し、ASEAN域内の連結性の現状と課題を探った>
日本とASEANの友好協力50周年を機に、日本およびJICAがASEANと共に築いてきた信頼と発展の足跡を振り返り、未来に向けたパートナーシップ像について考えたい。本記事では、ASEANが一つの地域として発展し、日本とともに成長するために重要な「連結性」について取り上げる。ASEANの国々を道路でつなぐ経済の大動脈「南部経済回廊」をJICA職員らが実際に走行し、連結性の現状、そして強化に向けた課題を探った。
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連結性強化で、国を越えた往来を活性化
南部経済回廊は、ベトナムからカンボジア、タイ、そしてミャンマーへと約1千キロにわたってインドシナ半島南部を横断する、交通と物流の大動脈です。道路や橋梁などの運輸インフラを包括的に整備することで域内の連結性を高め、国をまたいで人やモノが活発に移動できるよう、JICAはアジア開発銀行(ADB)や世界銀行と共に、20年以上前からこの南部経済回廊整備への協力を進めてきました。
国境をまたぐ経済回廊のスムーズな往来は、域内の連結性を測る一つの指標です。ASEANの発展に欠かせない連結性強化への協力が、はたしてどのように機能しているのか、そして今後の課題は何か----。この10月、JICA職員と専門家らがベトナム・ホーチミンから、カンボジア・プノンペンを経てタイ・バンコクまで、南部経済回廊の約900キロを実際に走行し、回廊沿線で活動する企業や工業団地を訪問。道路整備や貿易円滑化、さらにはビジネス展開の状況など、ASEAN域内の連結性における現状と課題を探りました。
著しい効果があった物理的連結性
「ベトナム国境と首都プノンペンを結ぶカンボジアの国道1号線では、コンテナを積載したトラックや国際バスが数多く走っており、ベトナムとカンボジアの2国間の物流や交通量が格段に増えていることを目の当たりにしました」
JICAでインフラ整備などを担当する社会基盤部の小泉幸弘次長は、日本がJICAを通じて2000年から整備を支援してきた国道1号線の現状を、実感を込めてそう話します。この国道1号線の整備で、2001年にホーチミンからプノンペンまで12時間ほどかかっていた移動が6時間に短縮されていると言います。
「また、プノンペンとタイ国境を結ぶ国道5号線(2013年から日本が整備を支援)は、片側2車線の道路改修がほぼ完成しています(※)。以前は時速30キロで8時間ほどかかっていたプノンペンからバッタンバンまでの区間が、今回、時速90キロ(規定速度)でスムーズに走行可能でした。この国道5号線が移動時間の短縮に与える効果は著しいと感じました」と小泉幸弘次長。
(※)国道5号線:JICAによる協力区間の総延長366kmの約90%が完成していることから、2023年11月22日、カンボジアのフン・マネット首相出席のもと、現地で完工式が実施された。