最新記事
ミャンマー

ミャンマー分裂?内戦拡大で中国が軍事介入の構え

China Deploys Howitzers As War on Border Threatens To Spill Over

2023年11月29日(水)17時30分
アーディル・ブラール
ミャンマーの少数民族カレン族の部隊に捕まって荷台に乗せられた国軍兵士

ミャンマーの少数民族カレン族の部隊に捕まって荷台に乗せられた国軍兵士(11月15日、ロイコー) Karenni Nationalities Defense Force/REUTERS

<ミャンマーと中国との国境で、中国の人民解放軍が実弾による射撃訓練を実施。戦闘の波及に備える中国の西側へのメッセージは>

<動画>ミャンマー国境で反軍政部隊に煙弾を投げる中国軍

 

中国軍は11月25日、ミャンマーとの南部国境付近で行った大規模な軍事訓練の様子を撮影した画像を公開した。ミャンマーでは、軍事政権と反政府勢力との戦闘が続き、国境を越えて拡大しそうな勢いになっている。

中国人民解放軍(PLA)の南方戦域司令部は「中国・ミャンマー国境の中国側で実施中の実弾射撃演習において、榴弾砲と対砲台レーダーを配備した」と、中国国営のタブロイド紙環球時報は報じている

同紙は、人民解放軍が「隣国で武力衝突が起きているので、国家主権と国境の安定を守るために部隊の戦闘能力をテストし、示そうとした」と伝えた。

この演習のタイミングと、それが地域の安全保障に与える潜在的な影響について、国際的な注目が集まっている。環球時報によれば、今回の演習は「年次訓練計画の一部であり、戦域司令部の軍事ユニットの迅速な機動性および国境封鎖と射撃能力をテストすることを目的としている」という。

中国はミャンマーの反軍事政権連合内の特定の勢力を支援しているが、これはリスクが大きい戦略だ。オブザーバーに言わせれば、ミャンマーの内戦に中国が積極的に関与するのは、非常に厄介なことになりかねない。

ミャンマーの分裂に備えて

「一種の民族的な利害関係から始まった戦いが、ミャンマー国家と国防軍に対する戦いとなれば、まったく別の性格を帯びるかもしれない。中国がそれを望んでいるとは思えない」と、ロンドン大学東洋アフリカ学院の上級講師アビナッシュ・パリワルは本誌の取材に答えた。

「ミャンマーの分裂は現実になる可能性がかなり高い。ミャンマーの大統領でさえ、そう公言している」とパリワルは言う。

中国は、軍事政権の収入源となっているミャンマー国内の違法行為に対抗する計画の一環として、集中的な賭博取締り作戦を実施している。

軍事政権は、2021年にアウン・サン・スー・チーが率いる民主的に選出された政府を打倒して以来、「三同胞連合」と呼ばれる、3つの少数民族の武装勢力の連合体との抗争を繰り広げてきた。

AP通信によれば、軍事政権打倒をめざす自称反乱軍は26日、いくつかの町を占領したという。そのなかには、中国との国境の町ムセにある5つの主要な交易拠点のひとつ、キン・サン・チョート国境ゲートも含まれている。

ミャンマー軍に対する少数民族連合の攻勢から数週間、状況は著しく変化したが、政府の対応はまだ明らかではない。

軍事政権は27日、中国が軍事訓練を行っていることは認識していると述べた。

カルチャー
手塚治虫「火の鳥」展 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中