最新記事
世界秩序

世界秩序を変えてしまった「2つの戦争」...次の「世界覇者」はどの国なのか?

THE WARS OF THE NEW WORLD ORDER

2023年11月21日(火)14時00分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)

アメリカ主導の現在の世界秩序と、それを支えるIMFや世界銀行、国連などの機関も、所詮は戦争から生まれたものだ。

ところが今はアメリカの権威が低下し、国連以下の諸機関も機能を失っている。イスラエルとウクライナは最大の支援国アメリカを頼っているが、両国とアメリカの間にも不協和音が生じている。

アメリカはガザの民間人の犠牲を最小限に抑えるよう求めたが、イスラエルは無視した。ウクライナ軍の反転攻勢に関しても、米政府部内には作戦の無謀さを指摘する声がある。

ガザ戦争が長引けば、広義の中東圏で地政学的再編成が起きる可能性がある。そして、その場合に最もあおりを食うのはウクライナかもしれない。

今は西側からの支援が先細りになることだけは何としても避けたい時期なのだが、同国のゼレンスキー大統領も認めているように、既に世界の関心はウクライナからガザ地区に移ってしまっている。

ロシアの軍事経済化が進み、中国の経済成長が鈍化し、グローバルサウスの経済的重要性が増していけば、国際秩序が一変する可能性は高い。

一方で世界は、格差の拡大や権威主義の台頭、AI(人工知能)に代表される技術の進化、環境破壊や気候変動への対応などを迫られている。

もはや地球規模で地政学的な再編が起きる事態は避け難く、西側陣営とそのライバル勢(中国やロシア、そしてイスラム圏)の衝突は恒常化しかねない。

©Project Syndicate


231128P15_Chellaney.jpgブラマ・チェラニ
BRAHMA CHELLANEY
インドにおける戦略研究・分析の第一人者。インド政策研究センター教授、ロバート・ボッシュ・アカデミー(ドイツ)研究員。『アジアン・ジャガーノート』『水と平和と戦争』など著書多数。

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米軍の麻薬密売阻止、陸路でも近く開始 トランプ氏が

ビジネス

完全失業率10月は2.6%、雇用情勢底堅く 有効求

ビジネス

鉱工業生産10月は1.4%上昇、2カ月連続プラス 

ビジネス

米メディケアの薬価引き下げ、大半の製薬企業は対応可
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中