アメリカ主導の現在の世界秩序と、それを支えるIMFや世界銀行、国連などの機関も、所詮は戦争から生まれたものだ。

ところが今はアメリカの権威が低下し、国連以下の諸機関も機能を失っている。イスラエルとウクライナは最大の支援国アメリカを頼っているが、両国とアメリカの間にも不協和音が生じている。

アメリカはガザの民間人の犠牲を最小限に抑えるよう求めたが、イスラエルは無視した。ウクライナ軍の反転攻勢に関しても、米政府部内には作戦の無謀さを指摘する声がある。

ガザ戦争が長引けば、広義の中東圏で地政学的再編成が起きる可能性がある。そして、その場合に最もあおりを食うのはウクライナかもしれない。

今は西側からの支援が先細りになることだけは何としても避けたい時期なのだが、同国のゼレンスキー大統領も認めているように、既に世界の関心はウクライナからガザ地区に移ってしまっている。

ロシアの軍事経済化が進み、中国の経済成長が鈍化し、グローバルサウスの経済的重要性が増していけば、国際秩序が一変する可能性は高い。

一方で世界は、格差の拡大や権威主義の台頭、AI(人工知能)に代表される技術の進化、環境破壊や気候変動への対応などを迫られている。

もはや地球規模で地政学的な再編が起きる事態は避け難く、西側陣営とそのライバル勢(中国やロシア、そしてイスラム圏)の衝突は恒常化しかねない。

©Project Syndicate

231128P15_Chellaney.jpgブラマ・チェラニ

BRAHMA CHELLANEY

インドにおける戦略研究・分析の第一人者。インド政策研究センター教授、ロバート・ボッシュ・アカデミー(ドイツ)研究員。『アジアン・ジャガーノート』『水と平和と戦争』など著書多数。
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