最新記事
ウクライナ戦争

ロシア軍の戦死者1日の最悪を更新? 原因はアウディーイウカの戦略ミス

Russia Rapidly Approaching Grisly Milestone, According to Kyiv Figures

2023年10月23日(月)19時39分
エリー・クック

アウディーイウカに向けて迫撃砲を発射する親ロ派兵士(2022年9月) REUTERS/Alexander Ermochenko

<最近の大規模攻撃でロシア軍の死者は急増し、空前のレベルに達するとウクライナ側が発表。ロシアの犠牲が大きいことは確実だ>

<動画>ウクライナ軍のドローン攻撃で次々と誘爆するロシア戦車

ウクライナでのロシア軍の兵員の損失はここへきて急増し、死傷者数は30万人に近づいている、とウクライナ側が発表した。

ウクライナ軍参謀本部が10月21日に出した最新情報によれば、2022年2月の戦争勃発以来、ロシア軍は約29万2850人の兵士を失ったという。そのうち790人は過去24時間以内に死亡した。

その前日の20日には、ロシア軍が1日で1380人の戦闘員を失ったと発表。ほぼ20カ月に及ぶこの戦争において、ロシア軍にとって最も人命の損失が大きい戦闘だったと述べた。

ロシアはウクライナ戦争における自軍の死傷者数を発表していない。ロシア国防省は20日、ウクライナ軍は過去1週間、クピアンスク周辺の前線で約995人、ドネツクのライマン周辺で940人の戦闘員を失ったと発表した。

ロシアによると、ウクライナ軍はドネツク周辺で2065人以上の兵士を失い、さらにロシアが併合した地域の南部で過去7日間に1010人の兵士が戦線離脱したという。ウクライナは同じ期間にザポリージャ南部とへルソン地方でさらに820人の兵士を失った、とロシア政府は発表した。

ロシア側が発表したこれらの数字を合計すると、10月14日〜20日の間にウクライナ南部と東部で失われたウクライナ軍兵士は3895人となる。ウクライナ軍参謀本部は、同時期にロシア軍は6140人を失ったと主張している。

自国の被害は認めない

本誌は、ロシアとウクライナが発表した数字を独自に確認することはできなかった。ロシアもウクライナも自国の被害については口を閉ざし、自国の死傷者数や破壊された軍備の量について、認めることはほとんどない。

「現在進行中の紛争で死傷者数を特定するのはきわめて難しい。双方がデータを秘密にし、敵の死傷者数を膨らませようとするからだ」と英ロンドン大学キングス・カレッジ戦争学部の特別研究マリーナ・ミロンは今年5月に本誌に語っている。

ロシアは10月から、ウクライナ軍が6月初めに夏の反攻を開始して以来初の大規模な攻撃を開始し、ウクライナ東部ドネツクの町アウディーイウカに焦点を当てた。このコークス生産の中心地は、9年前からウクライナとロシアおよび、親ロシア派武装勢力の間の戦闘の最前線になっている。ここで勝てばロシア政府にとって戦術的にも象徴的にも重要な勝利となっただろう。

だがロシアはアウディーイウカ周辺の領土をいくらか獲得したものの、西側のアナリストはすぐに、この攻撃で多くの兵士と軍備を失ったと評価した。

ロシア軍は軽歩兵を「確実な死」にさらしていると、アウディーイウカを担当するウクライナ軍タブリア部隊のオレクサンドル・シュトゥプン報道官は17日に本誌に語った。

 

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 150億ドル

ビジネス

ドイツ銀、28年にROE13%超目標 中期経営計画

ビジネス

米建設支出、8月は前月比0.2%増 7月から予想外

ビジネス

カナダCPI、10月は前年比+2.2%に鈍化 ガソ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中