最新記事
ロシア

ロシア旅客機がシベリアの原野に緊急着陸...ロシアの空で、深刻なトラブルが頻発している理由とは?

Russia's Crumbling Planes Keep Coming Down. Putin Wants More Flights

2023年9月17日(日)07時35分
ブレンダン・コール
ロシア・ウラル航空の旅客機

Al.geba/Shutterstock

<エアバス機やボーイング機をリースしながら返還に応じないロシア。こうした機体が今、飛行中に次々と深刻なトラブルを起こしている>

ロシアで、航空機が緊急着陸するなどのトラブルが相次いでいる。9月12日には、シベリアのノボシビルスク州で国内線旅客機が緊急着陸する事態が発生した。背景には西側諸国からの経済制裁があると見られるが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアの航空産業の強化を呼びかけている。

■【動画】シベリアの原野に緊急着陸したロシア旅客機...緊迫した現場の様子

ロシアは高水準の航空機製造技術を持っているが、ウクライナへの侵攻を理由に制裁を科せられているため、国内航空会社が保有するエアバス機やボーイング機の予備の部品が不足している。その影響か、ロシアではこの数カ月、航空機の緊急着陸が複数発生している。

テレグラム上にあるロシアのネットメディア「Baza」のチャンネルによれば、12日には黒海沿岸のリゾート都市ソチからシベリア南西部の都市オムスクに向かっていたウラル航空のエアバス320型機で、機体にトラブルが発生。パイロットは当初、シベリア州連邦管区ノボシビルスク州にある空港に緊急着陸したいと希望したが、結局は同州内の原野に着陸せざるを得なかったという。

ソーシャルメディアに投稿された動画を見ると、緊急着陸した航空機は右翼に燃えた痕跡がある。機体からは緊急避難用のスライドが出ており、周囲に複数の人が立っている様子も映っている。

ロシア連邦航空局は、機体が緊急着陸した場所はノボシビルスク州にある森のすぐ脇にあるカメンカ近郊で、ここは「上空から選んだ場所」だと説明した。同機に乗っていた159人に怪我はなく、乗客は「最寄りの村に滞在している」ということだ。

満足なメンテナンスができない

一方でこれと同じ日、プーチンはノボシビルスクから約5600キロメートル以上離れた港湾都市ウラジオストクで、ロシア政府は2024年3月1日までに極東地域の航空産業の開発および近代化に向けた計画を作成する必要があると述べ、2030年までにロシア極東の国内便の乗客数を年間400万人に増やすという目標を発表した。

ロシアの重大犯罪の検証を行う連邦捜査委員会は、12日の緊急着陸について、航空安全規則違反がなかったかどうか捜査を始めている。

国営通信社RIAノーボスチの報道によれば、首都モスクワから約1600キロメートル東方のエカテリンブルグに本社を置くウラル航空は、緊急着陸した航空機は油圧装置が故障していたと説明した。この航空機は2013年からウラル航空がリースしており、20年前から使用されている。

今回の事故以前にも、ロシア国内では同様の出来事がたびたび発生している。2023年3月には、ソチからクラスノヤルスクに向かっていたロシア航空の航空機が緊急着陸。この際、機内で酸素マスクが出される劇的な瞬間を捉えた動画が出回った。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中