最新記事
環境

ファスト・ファッション業界の生み出す毎週1500万点の廃棄物がグローバルサウスを苦しめる

2023年9月11日(月)18時02分
ロイター
アクラのビーチに築かれた古着の廃棄物

アクラのビーチに築かれた古着の廃棄物 Bloomberg Quicktake / YouTube

昨年のマストアイテムだったドレスやつい昨日までのヒット商品など、西側先進諸国が脱ぎ捨てた膨大な衣類が、いわゆる「グローバルサウス」を悩ませている。ファストファッション産業に過剰生産の責任を取るべきだという声が高まっている。

ガーナの首都アクラには、欧州や北米、アジアから、毎週約1500万点の古着が圧縮梱包の形で到着する。ここは世界最大の古着市場だ。

アクラで活動するオール・ファウンデーションによれば、こうして輸入された衣類のほぼ半分はその後再利用されずに廃棄されるという。同団体は、遠い国の消費ブームがもたらした汚染に対する補償を求めるキャンペーンを展開している。

アクラの廃棄物処理当局を指揮するソロモン・ノイ氏は、「こうした衣類の多くはその国で処分されるべきだが、圧縮梱包の形でここまで運ばれてくる。ファストファッションは無駄を加速させている。こちらの税金であちらの過剰消費の後始末をさせる、そういう形で我々を利用し続けられるとは期待しない方がいい」と言う。

ノイ氏はトムソン・ロイター財団に対し、衣類からボロ布に至るまで毎日数百トンもの繊維製品が廃棄され、排水溝や水路を詰まらせ、かつては無垢の美しさを誇ったビーチを汚し、海底に堆積している、と語った。

「毎週、ビーチや水路から廃棄された古着を回収している。埋立地は満杯だ。この国は西側先進諸国のゴミ捨て場ではない」とノイ氏は言う。

大手ブランドと消費者の双方から発生する衣料廃棄物は、第二の人生を歩むべくガーナに運ばれてくる。アフリカには使用済みの繊維製品をバルク購入し国内市場向けに再利用する大規模な輸入拠点が数十カ所あり、アクラもその1つだ。

ノイ氏によれば、この中古衣類市場からは毎日少なくとも100トンの繊維製品が廃棄されるが、アクラ市のゴミ運搬トラックが運べるのは30トンまでだという。

降雨や洪水があると、無許可のゴミ集積所に溜った廃棄衣類が水路に流出し、市内のビーチへと向かってしまう。

世界一の古着市場

アクラ市内、廃棄された鉄道車両の背後に広がっているのが、「カンタマント」と呼ばれる世界最大級の古着市場だ。

手作りの屋台が数百も並び、しわくちゃになったポロシャツ、使い古しのバッグやすり減った靴を並べる。どれも西側の人気ファッションブランドだ。

アジアで生産された偽ブランド品も多い。

売り手と買い手は、山のように積まれた古シャツや女性もの衣料品を覗きこみ、照りつける陽射しのもと、値段交渉に励む。

アベナ・エッスーン氏(42)は、1年前にはこの市場に屋台を構え、ガーナのオフィス労働者を相手に、ロンドンから仕入れた古着のブラウスやスカートを販売していた。現在では、欧州諸国を回って衣料廃棄物危機への取組みを支援するよう働きかけるロビイスト団体に参加している。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中