最新記事
戦争

ウクライナ、知られざるもう一つの戦い 長期にわたるストレスで家庭内暴力が大幅増加

2023年8月8日(火)20時31分
ロイター

中継地点

ドニプロは、ロシアに占領された地域から逃れる人々と、東部や南部の前線に向かう人々の中継地点となっている。

この街では、政府と国連人口基金(UNFPA)が、DVから逃れた人のための救援センターを運営している。昨年9月の開設から5月中旬までに800人に支援を提供したが、その大半は女性だった。

 
 
 
 

救援センターで働くケースワーカーによれば、支援を受けた人のうち警察に被害を届け出たのは約35%にすぎないという。DV問題に取り組む専門家や弁護士が指摘するように、警察のデータが示すよりもDVが広がっている可能性がある。

救援センターの心理学者テチャナ・ポゴリラ氏によると、戦火を逃れてドニプロに避難してきた人々のなかには、不慣れな土地にいるせいで、自分を虐待する者への依存を強めてしまうDV被害者も存在するという。

「ドニプロに逃れてきて、一家が1つの部屋で暮らすことになる場合もある」とポゴリラ氏は語る。「仕事が見つかればいいが、見つからずに生活が苦しくなる人もいる。さらにウクライナを巡る国際情勢と不安が加われば、ストレスと対立が増大する」

戦争により、国の財源も限界に近づいている。

前出のレフチェンコ氏は、女性のためのシェルターの一部は戦火を逃れてきた人々を収容するために転用されており、ジェンダーを理由とする暴力への対策に割り当てられた国家予算の一部が防衛費に振り向けられていると話す。

ジェンダー関連暴力対策の予算は、2021年の約1000万ユーロ(約15億6000万円)から、今年は420万ユーロまで減少したとレフチェンコ氏は言う。

ウクライナ検察庁で子どもの利益保護及び暴力対策局を率いるユリア・ウセンコ氏によると、警察・検察当局は、前線から帰還する心的外傷を負った兵士たちを巡る潜在的な課題を警戒してきたという。

ウセンコ氏は、検察庁は2月、DV関連の裁判手続きを検証する部門を設立したという。

だが、社会福祉関係者は財源不足を懸念している。

避難民のためのシェルターを運営するドニプロ社会福祉センターのリリア・カリテイウク所長は、「DV発生率が非常に高くなると予想している」と語る。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

高市首相、応援演説で円安メリットに言及 米関税のバ

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 6
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 7
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 10
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中