最新記事
ワグネル

正規軍に見切り?ロシアは国中ワグネル式準軍事組織だらけになる

Russia Is About to Get Whole Lot More Wagner-Style Paramilitaries

2023年7月26日(水)14時49分
イザベル・ファン・ブリューゲン

ロシア中でこれが日常の光景になるかも(6月24日、武装反乱の起点となったロシア南部ロストフ州に集まったワグネル) REUTERS

<ウクライナ戦争における正規軍の多大な損失を受けて戦争遂行に不安をかかえるロシアは、来年から地方自治体による軍設立を合法化する>

<動画>弱いロシア軍に不満?プーチンが露骨にショイグをシカトする衝撃映像

ロシアの各地方自治体の首長が、独自に準軍事組織を設立できるようにする法律が、ロシア連邦議会下院で可決された。

7月25日の朝に発表されたこの法律によれば、準軍事組織には、連邦予算と地方予算から資金が提供され、「戦時における動員あるいは戒厳令の期間中、公共の秩序の保護を強化し、公共の安全を確保する」活動を行う。

ウクライナの反攻が始まって1カ月以上、ロシア正規軍が戦場で大きな損失を被っていると報じられるなかで、この法律は成立した。

悪名高い準軍事組織、民間軍事会社ワグネル・グループは、特に東部ドネツク州の激戦地バフムトでロシア軍を支援して戦ってきた。だが、ワグネルの創設者で代表を務めるエフゲニー・プリゴジンは6月に武装反乱を起こした。現在、プリゴジンは手勢の一部と共に、ベラルーシに亡命している。

ベラルーシの野党指導者でリトアニアに亡命中のスベトラーナ・チハノフスカヤの最高政治顧問を務めるフラナク・ビアコルカは本誌に、ベラルーシを拠点とするワグネルの戦闘員は現在3000~4000人で、まもなくさらに増えるだろうと語った。プリゴジンもこの宿営地を訪ね、次の活躍の場が訪れると約束したという。

公的な武器支給が合法に

今回成立した法律によって、地方の首長が設立することができる地域軍事組織は、ロシア内務省やロシア連邦保安庁、ロシア国防省を支援する形で、ロシア連邦の国境を守り、破壊工作や外国の偵察部隊を阻み、非合法の武装集団と戦うことを求められる。

また、この法律によれば、「この軍事組織のメンバーは、敵の攻撃に反撃するために、無人航空機、水上船および水中船、各種車両、無人車、その他の無人自動システムの運転を停止させる権利を有する」

こうした準軍事組織は解散した場合、ロシア国防省から支給された武器を返還しなければならない。

この法律は、2024年1月1日からロシアにおける徴兵年齢を拡大する点で物議を醸している法案の一部として導入される。

今年7月上旬、ウクライナと国境を接するロシア・ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラドコフ知事は、国境沿いに配備される領土防衛大隊の兵士に武器を支給すると約束。武器は「現行法の枠内で」提供されると述べた。

当時の法律では、防衛大隊に武器を支給することは認められていなかった。

グラドコフがこの約束をしたのは、6月にウクライナ軍が保有するロシア製戦闘機がベルゴロド州に侵入した後のことだった。

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中