戦争中なのにクリミア大橋が観光客で大渋滞 ロシア軍の足を引っ張る
Putin's Army Hurt by Influx of Russian Tourists to Crimea—ISW
クリミアは戦場なのになぜ、ロシア人はのんきに遊びにくるのか(写真は2019年、海岸保養地のエウパトリヤ) Alexey Pavlishak-REUTERS
<ウクライナが奪還を誓うクリミア半島に、押し寄せるロシア人観光客のせいでロシア軍は戦争遂行に必要な交通連絡線が確保できなくなっている>
<動画>ウクライナ特殊部隊、ロシア軍の塹壕で「敵10人を殺害した」映像を公開
クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア大橋で、避暑に向かうロシア人観光客が交通渋滞を引き起こしている。ウラジーミル・プーチン大統領は、観光客を迂回させるよう地方当局者に命じたという。
ワシントンのシンクタンク「戦争研究所(ISW)」によれば、ロシア本土から2014年にプーチンが併合したクリミア半島に訪れる観光客が夏の旅行シーズンに入って爆発的に増え、ロシアにとって「最も重要な前線と後方を結ぶ交通路」に渋滞を引き起こしている。
戦争のニュースに特化したロシアのあるブロガーは、クリミア大橋の入り口の交通量は7月に入ってから40%増加しており、夏の観光シーズンの間、さらに増えるだろうと述べた。
クリミア半島は、ロシアとウクライナの双方にとって戦略的な価値が大きい場所だ。南部戦線では、ウクライナ軍の部隊がクリミアに隣接するヘルソン州からロシア軍が支配するドニプロ川東岸に渡り、そこからクリミアに南下しようとしている。成功すれば、ウクライナの悲願であるクリミア半島の奪還も夢ではなくなる。
攻撃対象なのになぜ行く?
プーチンは7月3日、クラスノダール州のベニアミン・コンドラチエフ知事に対し昨年併合を宣言したウクライナ東・南部4州からの迂回ルートに観光客を誘導する方法を検討するよう指示した、と国営通信タス通信が報じた。
だが、これらの地域はウクライナによる反攻の標的となっている。ウクライナ参謀本部のオレクシー・フロモフ准将は5日、ウクライナ軍が6月22日にストームシャドー・ミサイルを使って、ヘルソン州とクリミアを結ぶチョンハル海峡に架かる橋を攻撃したことを確認した。
コンドラチエフはプーチンに、「ロシアの新たな領土を車で通ることは、観光客にとって誇りの源になる」と語り、車を使う旅行者には橋を迂回してクリミアに向かう「陸路回廊」を通るよう勧めたと、ロシアの独立系ニュースメディア「アギェーンツトバ」が報じた。
この迂回路は、ドネツク州のマリウポリ市とザポリージャ州のメリトポリ市を通っている。
別のロシア人戦争ブロガーは、戦争中にもかかわらず、ロシア人がクリミア半島で休暇を過ごしたがっていることを、ロシア政府は正しく分析していなかったと述べた。
この軍事ブロガーは、交通問題を解決するために、ロシアの黒海艦隊は、クリミア半島と、最も近いロシア領のクラスノダール地方を行き来する車を運ぶフェリーを2隻提供すべきだと提案した。