最新記事
ウクライナ

戦争中なのにクリミア大橋が観光客で大渋滞 ロシア軍の足を引っ張る

Putin's Army Hurt by Influx of Russian Tourists to Crimea—ISW

2023年7月6日(木)15時44分
ブレンダン・コール

クリミアは戦場なのになぜ、ロシア人はのんきに遊びにくるのか(写真は2019年、海岸保養地のエウパトリヤ) Alexey Pavlishak-REUTERS

<ウクライナが奪還を誓うクリミア半島に、押し寄せるロシア人観光客のせいでロシア軍は戦争遂行に必要な交通連絡線が確保できなくなっている>

<動画>ウクライナ特殊部隊、ロシア軍の塹壕で「敵10人を殺害した」映像を公開

クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア大橋で、避暑に向かうロシア人観光客が交通渋滞を引き起こしている。ウラジーミル・プーチン大統領は、観光客を迂回させるよう地方当局者に命じたという。

ワシントンのシンクタンク「戦争研究所(ISW)」によれば、ロシア本土から2014年にプーチンが併合したクリミア半島に訪れる観光客が夏の旅行シーズンに入って爆発的に増え、ロシアにとって「最も重要な前線と後方を結ぶ交通路」に渋滞を引き起こしている。

戦争のニュースに特化したロシアのあるブロガーは、クリミア大橋の入り口の交通量は7月に入ってから40%増加しており、夏の観光シーズンの間、さらに増えるだろうと述べた。

クリミア半島は、ロシアとウクライナの双方にとって戦略的な価値が大きい場所だ。南部戦線では、ウクライナ軍の部隊がクリミアに隣接するヘルソン州からロシア軍が支配するドニプロ川東岸に渡り、そこからクリミアに南下しようとしている。成功すれば、ウクライナの悲願であるクリミア半島の奪還も夢ではなくなる。

攻撃対象なのになぜ行く?

プーチンは7月3日、クラスノダール州のベニアミン・コンドラチエフ知事に対し昨年併合を宣言したウクライナ東・南部4州からの迂回ルートに観光客を誘導する方法を検討するよう指示した、と国営通信タス通信が報じた。

だが、これらの地域はウクライナによる反攻の標的となっている。ウクライナ参謀本部のオレクシー・フロモフ准将は5日、ウクライナ軍が6月22日にストームシャドー・ミサイルを使って、ヘルソン州とクリミアを結ぶチョンハル海峡に架かる橋を攻撃したことを確認した。

コンドラチエフはプーチンに、「ロシアの新たな領土を車で通ることは、観光客にとって誇りの源になる」と語り、車を使う旅行者には橋を迂回してクリミアに向かう「陸路回廊」を通るよう勧めたと、ロシアの独立系ニュースメディア「アギェーンツトバ」が報じた。

この迂回路は、ドネツク州のマリウポリ市とザポリージャ州のメリトポリ市を通っている。

別のロシア人戦争ブロガーは、戦争中にもかかわらず、ロシア人がクリミア半島で休暇を過ごしたがっていることを、ロシア政府は正しく分析していなかったと述べた。

この軍事ブロガーは、交通問題を解決するために、ロシアの黒海艦隊は、クリミア半島と、最も近いロシア領のクラスノダール地方を行き来する車を運ぶフェリーを2隻提供すべきだと提案した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中