世界的熱波の原因は、南極で起きている「270万年に1度」の超特異現象?
Antarctic Sea Ice Hits Once-Per-2.7-Million-Year 'Six Sigma' Event
ギルバートによると、南極の海氷は、温暖化が進む大気と海水に「上と下から温められている状態」で、融解が進むことは容易に予測できても、「多くのファクターが複雑に絡んでいるため、これまではどの程度減少するか予測しづらかった」という。
「それでも、人間の活動で気候が変わり続けている以上、南極の海氷も、北極のそれと同じ運命をたどることは避けられそうもない」
今年に入って急速に減少が進んだメカニズムは不明だが、気温と海水温の上昇が重なったことが一因とみられる。
「海氷システムは大気と海洋と切り離し難く結びついている」と、オーストラリア南極観測局で海氷の調査を行なっている物理学者のペトラ・ハイルはABCオーストラリアに語った。
「調査海域のすぐそばか、はるか遠くかを問わず、様々な要素の、ほんの小さな変化が、海氷に影響を与える。今は大気にも海洋にも平年よりはるかに大きなエネルギーがたまっている。そのため当然、海氷の動きも変化するし、海氷に働く熱力学的なファクターも通常とは違ってくる」
負の連鎖が始まる?
NASAによると、南極大陸の氷床は年間約1500億トンのペースで融解しているという。
元凶は人間の活動だと、ハイルは言い切る。「海氷に影響を与える海洋の温暖化と大気の激しい撹乱はおおむね人為的な要因によるものだ。今ではそれを認めない専門家はまずいない」
南極の海氷は「アイス・アルベド・フィードバック」と呼ばれる現象を通じて、地球の気温を調節しており、世界の気候と生態系に非常に大きな影響を及ぼす。アルベドとは太陽光の反射率のこと。白い氷は太陽光を反射し、熱を大気圏外に放出して、温暖化を抑える効果があるが、氷が解けると、熱が吸収されて温度が上がり、氷の融解が加速され、負の連鎖が始まる。
極地の海氷は、海生哺乳類やペンギンなど多くの生物種の生存に欠かせない。また、夏に海氷が解け、冬に再び凍結する季節的なサイクルは、世界の海流の循環を促し、栄養分に富んだ海水を世界中に行き渡らせて、海の生態系を支えている。海氷が減少の一途をたどれば、当然この働きも失われる。