最新記事
異常気象

世界的熱波の原因は、南極で起きている「270万年に1度」の超特異現象?

Antarctic Sea Ice Hits Once-Per-2.7-Million-Year 'Six Sigma' Event

2023年7月27日(木)19時46分
ジェス・トムソン

ギルバートによると、南極の海氷は、温暖化が進む大気と海水に「上と下から温められている状態」で、融解が進むことは容易に予測できても、「多くのファクターが複雑に絡んでいるため、これまではどの程度減少するか予測しづらかった」という。

「それでも、人間の活動で気候が変わり続けている以上、南極の海氷も、北極のそれと同じ運命をたどることは避けられそうもない」

今年に入って急速に減少が進んだメカニズムは不明だが、気温と海水温の上昇が重なったことが一因とみられる。

「海氷システムは大気と海洋と切り離し難く結びついている」と、オーストラリア南極観測局で海氷の調査を行なっている物理学者のペトラ・ハイルはABCオーストラリアに語った。

「調査海域のすぐそばか、はるか遠くかを問わず、様々な要素の、ほんの小さな変化が、海氷に影響を与える。今は大気にも海洋にも平年よりはるかに大きなエネルギーがたまっている。そのため当然、海氷の動きも変化するし、海氷に働く熱力学的なファクターも通常とは違ってくる」

負の連鎖が始まる?

NASAによると、南極大陸の氷床は年間約1500億トンのペースで融解しているという。

元凶は人間の活動だと、ハイルは言い切る。「海氷に影響を与える海洋の温暖化と大気の激しい撹乱はおおむね人為的な要因によるものだ。今ではそれを認めない専門家はまずいない」

南極の海氷は「アイス・アルベド・フィードバック」と呼ばれる現象を通じて、地球の気温を調節しており、世界の気候と生態系に非常に大きな影響を及ぼす。アルベドとは太陽光の反射率のこと。白い氷は太陽光を反射し、熱を大気圏外に放出して、温暖化を抑える効果があるが、氷が解けると、熱が吸収されて温度が上がり、氷の融解が加速され、負の連鎖が始まる。

極地の海氷は、海生哺乳類やペンギンなど多くの生物種の生存に欠かせない。また、夏に海氷が解け、冬に再び凍結する季節的なサイクルは、世界の海流の循環を促し、栄養分に富んだ海水を世界中に行き渡らせて、海の生態系を支えている。海氷が減少の一途をたどれば、当然この働きも失われる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:米航空会社、感謝祭目前で政府閉鎖の影響に苦慮

ワールド

アングル:ガザ「分断」長期化の恐れ、課題山積で和平

ビジネス

国内外の不確実性、今年のGDPに0.5%影響=仏中

ワールド

ウクライナ、ハルシチェンコ司法相を停職処分に 前エ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 10
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中