最新記事
ロシア

ワグネル・プリゴジンの乱で急浮上「ロシアの核兵器管理は大丈夫なのか?」

2023年6月26日(月)17時05分
ロイター

それでもロシアの核兵器の安全性は、常に米政府にとって「心配の種」だ。各情報機関は今年の「年次脅威評価報告」で「1990年代以降、ロシアの核施設における装備の保護や管理、対外説明状況は改善しているものの、依然として核物質の安全保障は懸念要素の1つだ」と結論づけた。

ならず者に奪われる危険

現在、米国の政策担当者が心配を募らせているのは、ワグネルの反乱で露呈した対ウクライナ戦争を巡るロシアの内部分裂が再燃すれば、一部の核兵器使用の決定権をロシア軍内部の「ならず者たち」によって掌握されてしまうシナリオだ。

ホフマン氏によると、米国とその同盟国は、このように新たな権限を得た勢力が核兵器をどう使うかのか、という疑念に直面している

ホフマン氏は、プーチン氏がウクライナに軍事支援をしている西側に核の脅しを行使しつつも、今のところそれに基づく行動はしていないと指摘する。

その一方で「これは西側に欲しいものを何でも強要できる力であり、新権力者が登場した場合、プーチン氏が持つルールに従うとは限らないのではないか」との見方を示した。

ロシアの核弾頭保有数は世界最大で、米国科学者連盟の推定では昨年時点で5977個に上る。米国は推定5428個だ。

このため複数の元CIA高官の話では、ロシアの戦略核戦力の指揮系統や安全保障などにかかわる情報収集は長い間、米国のスパイ活動における最優先事項だった。

もっとも昨年8月、ロシアが新戦略兵器削減条約(新START)に基づく相互査察活動停止を米国に通告したことで、こうした情報収集はより難しくなった。

ポリメロプロス氏は、米国側は偵察衛星を頼みにしてロシアの核兵器施設の安全性や核弾頭の動きを調べ、通信傍受によってロシアの各指揮官の忠誠心を監視していると述べた。

(Jonathan Landay記者)



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中