ロシアの戦術核配備でベラルーシ政権転覆の恐れ──ロシア高官
Russian Official Warns of Plot to Overthrow Belarusian Government
ルカシェンコ政権下でベラルーシは「ロシアの完全な衛星国」となったと、Shraibmanは指摘する。「それによりルカシェンコの身は安泰になった。いざという時はロシアが守ってくれるからだ」
ガルージン発言と相前後して、プーチンはベラルーシに戦術核を配備する方針を発表した。ベラルーシ軍が保有する旧ソ連の戦闘攻撃機Su24を、核弾頭を搭載できるよう改造し、ベラルーシ人パイロットの訓練も行うという。
ルカシェンコはロシアの高まる圧力に「全く無力」で、ただ言いなりになったのだろうと、元米陸軍大将のベン・ホッジスは言う。
ベラルーシへの戦術核配備は「ロシア政府による情報作戦」だと、ホッジスはみる。「自分たちは核兵器を持っているんだぞと、世界に思い知らせたいのだ。核をちらつかせるたびに、西側の多くの関係者が過剰にビビることをロシアは知っている。西側がウクライナ支援をためらい、及び腰にさせようという作戦だ」
ベラルーシは「核保有国」と吹聴
一方、ルカシェンコは乗り気だ。だが彼が気にかけているのは自身の政治的な利益だけだとShraibmanは言う。
「そのことは以前からベラルーシの将来を危うくしていたが、今はその傾向があまりにも明白になった」
ベラルーシの国営テレビの司会者で、ルカシェンコ政権のプロパガンダに力を入れているRyhor Azaronakは番組で、ベラルーシは今や「核保有国だ」と誇らしげに語り、隣国のポーランドやリトアニアに核攻撃を加えることもできるとまで言ってのけた。
ベラルーシの反体制派のリーダーで、今はリトアニアに逃れているスベトラーナ・チハノフスカヤは、ロシアの戦術核配備はベラルーシの民意に「甚だしく逆らう」動きだと非難した。
チハノフスカヤの政治顧問のフラナク・ビアチョルカはルカシェンコ政権が戦術核配備の受け入れを表明した3月28日に本誌の取材に応じ、「ベラルーシ国内の不服従と不満が高まり、反体制武装組織の活動も活発になるだろう」と語った。「以前にも、(ウクライナ侵攻のための)ロシア軍の装備が鉄道で大量にベラルーシに輸送されたときに、大規模な反体制運動が起きた。ベラルーシ領内にロシア軍の装備や兵士が大量に送り込まれ、ロシア軍の動きが活発化すれば、それに比例して反体制の動きも活発になる」
まして核の配備となると、国民の激しい反発を招くと、ビアチョルカはみる。
ロシアはベラルーシへの戦術核配備の発表に先立ち、米ロの新START(戦略兵器削減条約)の履行を停止し、核戦力に関する情報提供もやめると発表した。アメリカも同様の措置を取った。
<関連記事>
「欧州最後の独裁者」ベラルーシ大統領の豪邸告発動画で国民の怒りが爆発
ベラルーシ版ワグネル「ガルドセルビス」とは?──ひしひし伝わるプーチンからの強い「圧」
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら