最新記事
依存症

悪いニュースを読み続ける現代病「ドゥームスクローリング」の解決策は...5つの実用的なアドバイス

MANAGING THE BAD NEWS

2023年3月20日(月)12時10分
クリスチャン・ファン・ニューワーバーグ(アイルランド王立外科医学院ポジティブヘルス科学センター教授)
「ドゥームスクローリング」のイメージ

DISOBEY ART/SHUTTERSTCOK

<やめられない「ドゥームスクローリング」、コロナ禍で広がった悪習慣を賢く管理する>

悲しくなったり落ち込んだりしても、悪いニュースをチェックし続ける傾向――ある辞書によれば、それが「ドゥームスクローリング」だ。

新型コロナのパンデミックによって、多くの人が身に付けたこの習慣は、今後も消えない可能性が高い。

医療専門家の間では、ソーシャルメディア利用に限度を設けるべきだと助言する声が上がり、ソーシャルメディア依存のリスクも盛んに指摘されている。ドゥームスクローリングを問題視する報道が相次ぐなか、スマートフォンの使用そのものをやめる人も現れているという。

ドゥームスクローリングの弊害をめぐる研究には説得力があり、すべきことは明らかだ。それでも、アドバイスどおりに行動している人はごく少数らしい。それには、いくつかの理由がある。

危機の際に最新情報を遮断するのは賢明ではないし、多くの人はしていいこと、いけないことを指示されるのを歓迎しない。さらに、何かをするなと言われれば、言われた人はネガティブな気持ちになりがちで、行動を変える可能性は低くなる。

ならば、ドゥームスクローリングをやめるのではなく、より上手に付き合うようにしてはどうだろう?

効果的な最初の一歩が、非常時にニュースや情報を求めるのは、極めて正常な行為だと認識することだ。実際、私たち人類はそう反応するようにできている。危険に対して警戒を怠らないのはサバイバルの一環だ。情報を集め、脅威と向き合う準備を整える姿勢のおかげで、人類は何万年も生き残り続けてきた。

現在、人類は多くの脅威に直面している。欧州で続く戦争は、核兵器の使用にエスカレートする恐れがある。世界中で既に数百万人が死亡したパンデミックが発生し、気候変動による破滅的事態が予想され、天災や紛争があちこちで起きている。

こうした状況では、警戒するのは当然だ。現在の出来事をさらに知り、最新情報を得て備えたいと考えるのは合理的な態度にほかならない。

肝心なのは、ニュースを完全に遠ざけることではなく、必要なニュースが確実に手に入るようにすることだ。心がけたい5つの行動は――。

5つの実用的なアドバイス

①ニュースを読む時間を制限する

ニュースにアクセスする手法は限定しなくていい。1日に何時間なら適度だと感じるか。設定した限度は守るように努力しよう。

②確証バイアスに気を付ける

ニュースの消費者は知りたいことを選択できる立場だ。だが、自分の信念や見方を支持する情報を好む傾向、すなわち「確証バイアス」に注意する必要がある。

言い換えれば、人は時に、既に抱いている考えを裏付けてくれるニュースだけを求めることがある。あなたがこの記事を読んでいるのも、それが理由なのかもしれない。確証バイアスを警戒し、「読まない」と選択したニュースは何かを意識しよう。

③情報源を確かめる

どんなものでも、何かを消費するときは、どこから来たかを知ることが役に立つ。情報を投稿したのは誰か。彼らはなぜそれを共有しているのか。何かを説得しようとしているのか。特定の考え方や行動に導こうとしているのか......。

集めた情報をどう使うかを決めるには、こうした疑問の答えを知ることが大切だ。

④「白か、黒か」とは限らないと肝に銘じる

今の世界は分極化する一方だ。心理学者によれば、「分極化思考」は認知のゆがみ(思考の誤り)で、プレッシャーにさらされているときに起こる場合がある。物事を白か、黒かで判断しがちになり、世界は多彩で玉虫色であることを認識しようとしなくなる。

確固とした考えを失わないまま、別の意見への好奇心を維持するには、異なる視点に基づく記事に目を通すことが助けになるかもしれない。

⑤「ポジティビティーバイアス」をかけてみる

ドゥームスクローリングが有害なのは、多くの人がネガティブな情報に引き付けられがちだから。心理学用語で「ネガティビティーバイアス」と呼ばれる現象だ。

ポジティブな刺激(夏の心地よい日差し)よりも、ネガティブな刺激(捕食者などの脅威)を優先することは、人類の進化の歴史において重要だった。そこで、バランスを取るために、ポジティブな方向に偏ってみてはどうか。具体的には、前向きな内容の記事を意識して探すといい。

適切な情報収集は、より豊富な知識を得ることに役立ち、必要に応じて行動する能力を与えてくれる。ドゥームスクローリングが避けられないなら、正しくやるのが賢い道だ。

The Conversation

Christian van Nieuwerburgh, Professor of Coaching and Positive Psychology, RCSI University of Medicine and Health Sciences

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中