最新記事
中ロ関係

「習近平は対米戦争を準備中」──ロシアの中国専門家が指摘

China's Xi Jinping Is 'Getting Ready for War,' Russian Analyst Says

2023年3月6日(月)14時57分
トーマス・キカ

「武器ちょうだいよ」と、習近平におねだりでもしているかのようなプーチン(2022年9月、ウズベキスタンで行われた上海協力機構の首脳会議で) Sputnik/Sergey Bobylev/Pool/REUTERS

<習近平は国家主席就任直後からアメリカとの戦争に備えて軍備を増強してきた、とロシアの中国専門家がテレビ番組で断言した>

ロシアの国営テレビで中国の専門家が、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は将来起きるであろう西側との戦争の準備をしている、と断言した。

ロシアのニュース番組で流れたこの発言をキャッチしたのは、ロシアの国営メディアの報道の監視を専門にする人権団体ロシアン・メディア・モニター。3月3日に番組の動画をソーシャルメディアにアップした。

同団体の創設者であるジュリア・デービスによると、この動画では、ロシアとウクライナの戦争が続く中、中国がロシアに軍事援助をする可能性と、最近の中国によるウクライナ戦争の和平提案がそこにどう影響するか、といった点が論じられていた。

中国政府は2月24日に、ウクライナ戦争を終結させるための12項目の和平案を発表した。そこには関係国すべての主権を尊重することを求めるなど、ウクライナにとって有利な条項もあるが、受け入れがたい条項も含まれている。特に問題なのは、ロシア軍のウクライナからの撤退や、ロシアが侵攻で併合したウクライナの領土の放棄が求められていない点だ。

「一方、ロシアの専門家たちは、ロシアが中国から密かに軍事援助をしてもらうとしたら、どんな方法があるかを議論している」と、 デービスは3日にツイートした。「習近平が将来のある時点で、西側と戦争をするために準備をしていると、彼らは断言した。」

高まる米中戦争の危機感

この動画では冒頭で、中国の専門家であるニコライ・ビバロフが、中国の和平提案の意図についてコメントを促される。やがて話題は中国とアメリカの対立関係に移り、ビバロフは、習近平は10年以上前に国家主席に就任して以来、戦争の準備をしてきたと主張する。

「権力を握って以来、習は戦争の準備を進めている」と、ビバロフは言った。「戦争に勝つことができる軍隊を準備するよう命令を下した。習は何の疑いもなくアメリカが戦争を計画していると考えている」

この議論の中でビバロフは、ウクライナが多くの西側諸国から軍事援助を受けていることからすれば、中国は和平提案を申し出ているとはいえ、ロシアに軍事援助を提供する可能性があると言い、その方法について触れた。

「中国はおそらく国際法の枠内にとどまり、紛争の当事者に武器を供給することはないだろう。だが知っての通り、中国は非常に巧みにあらゆる制約を回避する。ロシア軍事協力関係にある第三国に武器工場を作ってそこからロシアに武器を送るかもしれない。このやり方であれば、国際法上も平和維持者としての中国のイメージなどを損ねることはないだろう」

米中戦争の可能性は、国防・外交政策関係者が常に頭を悩ませている懸念であり、危機感は高まり続けている。最近、アメリカのクリスティン・ウォーマス陸軍長官は、中国と衝突すれば、「物理的な武力攻撃と電力網やパイプラインへのサイバー攻撃の両方」によって、「アメリカ本土」が非常に大きな危険にさらされると警告した。

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ経済、下半期に減速へ 米関税で輸出に打撃=中銀

ビジネス

午後3時のドルは147円付近に上昇、2週間ぶり高値

ワールド

再送-解任後に自殺のロシア前運輸相、横領疑惑で捜査

ビジネス

中国5カ年計画、発改委「成果予想以上」 経済規模1
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワールドの大統領人形が遂に「作り直し」に、比較写真にSNS爆笑
  • 4
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 9
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 9
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中