建設現場に若手が足りない......未来の日本では道路や橋がボロボロのまま放置される
THE FORECAST FOR SHRINKING JAPAN
建設業の就業者は2011年以降、建設投資が拡大するなかでもほぼ横ばいをたどっており、2021年は482万人でピーク時と比べて29.6%少ない。技術者(施工管理を行う人)は1997年の41万人から2021年は37万人、技能労働者は455万人から309万人へとそれぞれ減った。受注高が減った時代に他業種に流出した人たちが戻っていないのだ。「雇用環境が劣悪」との印象が定着し、新規に就業する若者が増えないのである。
就業しても辞めてしまう人も少なくない。とりわけ不足しているのが、若い施工管理技士だ。建設現場には不可欠な存在であり、このままベテランが引退していけば建物を建てることが難しくなる。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計によれば、鉱業および建設業の就業者数は2017年から2040年にかけて約4割減少する。厚労省の「労働経済動向調査」でも、人手不足を示す指標の「DI」(「不足」と回答した事業所の割合から、「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値)は、建設業では2012年から人手不足を示す正の値となり、全産業の平均を上回っている。2020年は全産業の平均よりも22ポイントも高い46ポイントに達した。人手不足が極めて深刻であることを示す数字だ。
このため、建設業就業者も高齢化が進んでいる。2021年は55歳以上が35.5%を占め、全体の3分の1となっている。一方で、29歳以下は12.0%にとどまっている(上の図参照)。全体の25.7%を占める60歳以上の技能労働者の大半が今後10年で引退すると、熟練した技術も消えていく。現在の人手不足は、同時に将来的な懸念を内在している。
建設業も頼みの綱は外国人労働者だが、製造業と同じくどこまで当て込んでよいかは読み切れない。「WITHコロナ」政策を取る国が大勢となり、各国の建設現場で外国人労働者の受け入れニーズが高まっているためだ。
『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』
河合雅司[著]
講談社現代新書
(2022年12月)
累計100万部を突破する『未来の年表』シリーズの最新刊。昨年12月の発売以降、全国各地の書店で新書ランキング1位を獲得。今回の特集記事は同書収録の第1部「人口減少日本のリアル」で扱う16業界より5つを抜粋・再構成しており、同書の第2部では、瀬戸際の日本企業に対する具体的な処方箋を「戦略的に縮むための『未来のトリセツ』(10のステップ)」として提示している。
河合雅司(作家・ジャーナリスト)
1963年生まれ。中央大学卒業後、産経新聞社入社。同社論説委員などを経て人口減少対策総合研究所理事長。主な著書に『未来の年表』『未来の年表2』『未来の地図帳』『未来のドリル』(いずれも講談社現代新書)がある。