最新記事

日本のヤバい未来 2050

建設現場に若手が足りない......未来の日本では道路や橋がボロボロのまま放置される

THE FORECAST FOR SHRINKING JAPAN

2023年2月1日(水)16時30分
河合雅司(作家・ジャーナリスト)

建設業の就業者は2011年以降、建設投資が拡大するなかでもほぼ横ばいをたどっており、2021年は482万人でピーク時と比べて29.6%少ない。技術者(施工管理を行う人)は1997年の41万人から2021年は37万人、技能労働者は455万人から309万人へとそれぞれ減った。受注高が減った時代に他業種に流出した人たちが戻っていないのだ。「雇用環境が劣悪」との印象が定着し、新規に就業する若者が増えないのである。

就業しても辞めてしまう人も少なくない。とりわけ不足しているのが、若い施工管理技士だ。建設現場には不可欠な存在であり、このままベテランが引退していけば建物を建てることが難しくなる。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計によれば、鉱業および建設業の就業者数は2017年から2040年にかけて約4割減少する。厚労省の「労働経済動向調査」でも、人手不足を示す指標の「DI」(「不足」と回答した事業所の割合から、「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値)は、建設業では2012年から人手不足を示す正の値となり、全産業の平均を上回っている。2020年は全産業の平均よりも22ポイントも高い46ポイントに達した。人手不足が極めて深刻であることを示す数字だ。

230207p20_chart02ken.jpg

このため、建設業就業者も高齢化が進んでいる。2021年は55歳以上が35.5%を占め、全体の3分の1となっている。一方で、29歳以下は12.0%にとどまっている(上の図参照)。全体の25.7%を占める60歳以上の技能労働者の大半が今後10年で引退すると、熟練した技術も消えていく。現在の人手不足は、同時に将来的な懸念を内在している。

建設業も頼みの綱は外国人労働者だが、製造業と同じくどこまで当て込んでよいかは読み切れない。「WITHコロナ」政策を取る国が大勢となり、各国の建設現場で外国人労働者の受け入れニーズが高まっているためだ。

230207p20_KWI_03.jpg未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること
河合雅司[著]
講談社現代新書
(2022年12月)

累計100万部を突破する『未来の年表』シリーズの最新刊。昨年12月の発売以降、全国各地の書店で新書ランキング1位を獲得。今回の特集記事は同書収録の第1部「人口減少日本のリアル」で扱う16業界より5つを抜粋・再構成しており、同書の第2部では、瀬戸際の日本企業に対する具体的な処方箋を「戦略的に縮むための『未来のトリセツ』(10のステップ)」として提示している。

230207p20_KWI_02.jpg河合雅司(作家・ジャーナリスト)
1963年生まれ。中央大学卒業後、産経新聞社入社。同社論説委員などを経て人口減少対策総合研究所理事長。主な著書に『未来の年表』『未来の年表2』『未来の地図帳』『未来のドリル』(いずれも講談社現代新書)がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米BofA、利益率16─18%に 投資家に中期目標

ワールド

トランプ関税の合憲性、米最高裁が口頭弁論開始 結果

ビジネス

FRB現行政策「過度に引き締め的」、景気にリスク=

ワールド

米、ICBM「ミニットマン3」発射実験実施 ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇の理由とは?
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中