最新記事

ウクライナ戦争

ロシア軍のあまりの無能さは「驚き」であり「謎」...米専門家が語る戦争の現状と教訓

LESSONS FROM THE WAR

2023年1月28日(土)10時23分
ラビ・アグラワル(フォーリン・ポリシー誌編集長)

――アンマリー、あなたにとって意外だったことは?

スローター 最大の驚きは、特にインド、ブラジルや南アフリカの反応だ。ジョー・バイデン米大統領が掲げる「民主主義国と独裁国の戦い」という新たな構図の下、アメリカはこれらの国に積極的に接近してきた。太平洋地域で中国と向き合うなか、インドに対しては、クアッド(日米豪印戦略対話)などの数多くの話し合いに引き込む努力を傾けてきた。

それでもインドは立場を明確にすることをあからさまに拒絶し、今もロシア産石油を輸入し、ロシアから武器を購入する用意もある。欧米の大半のアナリストの評価よりも、はるかに大きな変化が世界秩序に起きていることを示すシグナルだ。

20世紀の非同盟運動とは事情が異なる。インド、ブラジル、南アフリカ、ASEAN諸国という重要国の一団が「これはもう私たちの戦争ではない。私たちが本当に懸念しているのは、私たち自身の地域内紛争だ」と主張している。

――軍事面の話に戻るが、世界各国はウクライナ戦争からどんな教訓を学んでいるのか。

ペトレアス 重要なのは、これは未来の戦争ではないと認識することだ。むしろ、冷戦の最盛期に逆戻りしたような戦いだ。私が旧東西ドイツ国境地帯に駐留する米軍旅団の少佐だった当時、戦争が勃発していたら、こんなふうだったのではないか。

未来型の戦争の要素はあるが、非常に限定的だ。例えば、アメリカがウクライナに供与した高機動ロケット砲システム(HIMARS)は80キロ先の食卓を標的にできる。これは大きな変革だ。ロケット砲の射撃目標を観測するのは、今やドローン(無人機)だ。とはいえ、これはインド太平洋地域で紛争が発生した際、想定される国際的な情報・監視・偵察活動の在り方とは異なる。

これから起きる劇的な変化として考えられるのは、無人システムの利用の激増だ。そうしたシステムは遠隔操作型に、それどころかアルゴリズムで管理されるものになるかもしれない。そうなれば(攻撃や殺害の)最終的判断は、マシンに状況判断や決断を行う能力を与えるアルゴリズムの設計者が下すことになる。

「見えるなら攻撃可能で、攻撃できるなら殺害可能だ」という冷戦時代の格言がある。では、全てが可視化されたら? 地上や上空、海上だけでなく、海中や宇宙空間も無人システムでカバーできる未来を想像してほしい。見えるものは攻撃できるし、全てが見えるようになる。その意味については、ごく慎重になるべきだろう。現実に待ち受けている未来は、今とは全く違うもののはずだから。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

VW、25年キャッシュフローは堅調 ポルシェ苦境や

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、5万3000円回復 米欧

ビジネス

テスラ、独ギガファクトリーの人員削減報道否定 雇用

ビジネス

貿易収支、12月は1057億円の黒字 対米輸出2カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている「とてつもなく巨大な」生物...その正体は?
  • 4
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 10
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中