「火星まで45日で到達!」「宇宙探査に革命!」原子力ロケットエンジン推進される
原子力ロケットで火星有人探査が現実化するか...... NASA
<NASAは、将来の火星有人探査に向けて、原子力ロケットのエンジンの開発を目指す計画を発表した......>
NASA(アメリカ航空宇宙局)は、将来の火星有人探査に向けて、原子力ロケットのエンジンの開発を目指している。2023年1月24日には、国防高等研究計画局(DARPA)と連携し、核熱推進(NTP)ロケットエンジンの実証実験を早ければ2027年にも行う計画を明らかにした。
核熱推進技術の研究で長い歴史がある
原子力ロケットは火星への飛行時間を短縮できるのが利点だ。長期にわたる宇宙放射線の被曝や微小重力環境下での生活などに伴う宇宙飛行士の健康リスクを低減できる。また、食料などの必要物資を軽減でき、実験装置などをより多く積み込むことも可能となる。
核熱推進は、太陽系での有人ミッションに適したロケット推進技術とされている。原子炉を利用して液体促進剤を加熱膨張させ、プラズマに変換し、ノズルから噴出させて推力を発生させる仕組みだ。
NASAには、核熱推進技術の研究で長い歴史がある。1950年代からすすめられたアメリカ原子力委員会(AEC)との共同プログラム「NERVA」では、1969年に核熱ロケットエンジンの実験に成功したものの、飛行試験が実現しないまま、1973年に中止された。
>>■■【画像】核熱ロケットエンジンの実験を行なっていた 1964年
核熱推進と原子力電気推進を組み合わせる
NASAは、初期段階の研究を対象とした助成プログラム「NIAC」の2023年度の助成先として、核熱推進と原子力電気推進(NEP)を組み合わせた米フロリダ大学ライアン・ゴス教授のコンセプトを選出している。
原子力電気推進は、NASAが核熱推進とともに注目している原子力ロケットの推進方法だ。原子炉で発電し、キセノンやクリプトンといった気体の促進剤を正に帯電させ、スラスターでイオンを押し出して、推力を生じさせる。1万秒超の非常に高い比推力を実現できるが、推力は小さい。
「太陽系の深宇宙探査に革命をもたらす」
ゴス教授が提案するコンセプトでは、「NERVA」の技術をベースとした最新の核熱推進で、化学ロケットの2倍の900秒の比推力(Isp)を実現できるとしている。また、原子炉での液体水素燃料の加熱で生じる圧力を用いて反応産物を圧縮する「ウェーブローター(WR)」を搭載すれば、核熱推進と同等の推力を担保したうえで、比推力が1400~2000秒となる。さらに、これと原子力電気推進を組み合わせることで、比推力を1800~4000秒まで高められる可能性がある。
ゴス教授は、このコンセプトについて「有人ミッションの高速輸送を可能とし、火星まで45日で到達できる」とし、「太陽系の深宇宙探査に革命をもたらす」と述べている。