W杯スタジアムはタリバンの協力を得て建設されていた
カタール政府と過激派組織との長き関係
テレグラフ紙は本件が、「議論を引き起こし労働者の虐待疑惑が発生している大会に、さらなる疑問を投げかけるものである」と指摘している。
米保守派ニュースメディアのワシントン・エグザミナーは、カタール政府と過激派集団とのあいだには歴史的に強い結びつきがあると解説している。
「カタールの政権には、テロ集団を支援してきた長い歴史がある。(イスラム原理主義組織の)ハマスに2012年以来18億ドルを供与し、安全な隠れ家を提供してきた。また、タリバンには『豪華な複数のSUV、無料の医療ケア、エアコン付きの住居』が与えられている」と記事は指摘している。
中東安全保障アナリストのセス・フランツマン氏は同メディアに対し、カタール政府がタリバンを「復権に導くべく支援した可能性が高い」との見方を示した。
カタール政府はまた、タリバンと非公式な同盟関係にある武装組織アルカイダに対しても、同組織のハリド・シェイク・モハメド元幹部がFBIの捜査網から逃れられるようパスポートを発給した疑いが持たれている。モハメド元幹部は911テロの首謀者のひとりでもある。
ワシントン・エグザミナーは、「イスラム過激派に対するカタールの危険な支援は根強く続いており、中東の大部分を不安定にしてきた」と指摘している。
大会はかえってカタールの評判を貶めたとの指摘も
カタールの名声を高めると期待されたW杯だが、逆に評判を貶めているとの指摘も出始めた。
英ガーディアン紙は昨年、開催決定以来カタールでは6500人の移民労働者が死亡していると報じた。大会が開幕してからも、同性愛者への差別問題やアルコール販売の撤回など騒動が相次いでいる。
サッカー関連のニュースを報じるフットボール365によると、元BBCジャーナリストのジョン・ソペル氏は、カタール国民がいまや開催招致を後悔しているとまで断言している。この発言はソーシャルメディアで広く拡散された。
経済的利益も当てが外れたようだ。カタールは過去12年間でW杯関連の事業に3000億ドルを投じ、競技場や交通網などを整備してきた。しかし、英エコノミスト誌は、W杯開催による経済効果は170億ドルに留まると指摘する。これは投資額の約5.7%にすぎない。
大会はいつしかカタール国民から、無用の長物呼ばわりされるまでになった。英ウイーク誌は、維持費が高くつくだけの厄介者を意味する「白い象(white elephant)」と呼ばれるようになったと報じている。
サッカーW杯史上初の中東開催で話題を集めたカタール大会だが、課題は文化的価値観の相違に留まらなかったようだ。過激派組織との繋がりが報じられる後味の悪い展開となった。