もはやゼロコロナをやめても中国経済の凋落は不可避...習近平「Dの四重苦」とは?

Xi’s Fourfold Economic Woes

2022年12月14日(水)16時26分
ゾーイ・リウ(米外交問題評議会フェロー)

9月段階で、中国の家計負債の総額は名目GDPの62.4%に達していた。中国人民銀行(中央銀行)の報告書によると、19年時点でも住宅ローン(中国では物件の完成以前に組まれ、返済が始まる例が多い)が家計負債の75%以上を占めていた。

今年6月末時点では、住宅ローンの残高は39兆元(約770兆円)近くに達している。住宅ローンの負担が重ければ、当然のことながら消費に回せる資金は減る。手元資金が足りなくなれば、庶民は消費者ローンで資金を借りる。

今年6月末時点で、消費者ローンの残高は総額17兆元(約335兆円)弱にまで膨らみ、住宅ローン残高の40%以上に達していた。これとは別に懸念されるのは、いわゆる「一帯一路」構想に基づく大規模なインフラ建設事業に関連する諸外国への貸し付けだ。

中国の金融機関が諸外国に融資した資金の4分の1(約940億ドル相当)は既に返済が滞り、債務再編の交渉が始まっている。「一帯一路」は習政権の看板政策であり、だからこそ金融機関の多くは積極的に融資に参加し、そうすることで党と政府への忠誠心を示そうとした。

政治的配慮に基づく融資だから、リスク管理は後回しにされた。そのツケが、いま回ってきた。債務不履行となった場合に、中国の金融機関が当該国の鉄道や港湾を差し押さえたらどうなるか。

中国の融資は略奪的で、途上国を「債務の罠」にはめるだけだという悪評が一段と広まるだろう。逆に、債務再編や返済免除に応じれば中国の金融機関が損失をかぶることになる。国際的な信用の毀損と国内の金銭的損失のどちらを選ぶか、中国政府は難しい選択を迫られる。

いずれにせよ、財政で国内の需要を刺激したければ、手っ取り早いのは公債の発行を増やすことだ。現に国務院(内閣に相当)は地方政府に対し、総額5000億元(約10兆円)の特別目的債の発行を10月末までに完了するよう指示していた。

また個々の開発政策に関わる3000億元(約6兆円)の融資計画に加え、さらに3000億元の支援も決定している。その原資も公債の発行だから、地方政府の借金はますます増えることになる。

金融政策での対応も難しい。日本を除けば世界は金融引き締めの方向に進んでいるから、中国政府としても低金利政策で需要を刺激するオプションは採りにくい。経済活性化のためとはいえ、中央銀行が大胆な金融緩和に踏み込むのは容易でない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、7日まで海峡封鎖ならイラン 攻撃示唆 

ワールド

不明兵捜索、時間との戦い イランの猛攻耐えた米軍救

ワールド

トランプ氏、イランに合意期限「6日」 米戦闘機乗員

ワールド

米、イランで不明の戦闘機乗員救出 トランプ氏「史上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「攻撃的知能」を解剖する
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 7
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 8
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 9
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中