最新記事

宇宙

「美しく、神秘的!」細長く伸びる潮汐尾でつながった「相互作用銀河」が観測される

2022年11月30日(水)17時40分
松岡由希子

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた相互作用銀河「アープ248」  Image Credit: ESA/Hubble & NASA,

<「おとめ座」の方向約2億光年先にある相互作用し合う3つの銀河で構成される相互作用銀河「アープ248」が観測された......>

「相互作用銀河」とは、衝突したり近傍を通過することで重力の影響を互いに及ぼし合う複数の銀河を指す。地球から約2億光年先のおとめ座方向に位置する「アープ248」は、相互作用し合う3つの銀河で構成される相互作用銀河のひとつだ。欧州宇宙機関(ESA)は2022年10月31日、ハッブル宇宙望遠鏡によって観測された「アープ248」の貴重な姿を公開した。

「アープ248」の2つの銀河をほぼ真正面からとらえた画像では、背景にある無関係な銀河を挟み、これらの銀河が細長い尾のようなものでつながっている様子がみられる。このように細長く伸びる星と星間塵の流れは「潮汐尾」と呼ばれ、塵やガスが豊富な銀河の重力相互作用によって形成される。

hubble_arp248_potw2244a-1.jpg

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた相互作用銀河「アープ248」 Image Credit: ESA/Hubble & NASA, Dark Energy Survey/Department of Energy/Fermilab Cosmic Physics Center/Dark Energy Camera/Cerro Tololo Inter-American Observatory/NOIRLab/National Science Foundation/AURA Astronomy; J. Dalcanton

「特異銀河」が一覧化された天文カタログ

米天文学者ホルトン・アープ博士が1966年に編纂した天文カタログ「アープ・アトラス」やアープ博士が同僚の天文学者バリー・マドア博士とともに1987年に出版した「カタログ・オブ・サザンペキュリアギャラクシーズ・アンド・アソシエーションズ」では、「アープ248」のような相互作用銀河や渦巻銀河をはじめ、大きさ、形状、組成などが通常と異なる「特異銀河」が数多く収録されている。

「特異銀河」が一覧化されたこれらの天文カタログは、相互作用銀河や銀河合体の解明に役立てられている。たとえば、2014年には「ISFO」と呼ばれる新たな分類の天体が発見された。銀河が相互作用するときに形成される様々な天体は「ISFO」に分類される。

ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている光学観測装置「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」は、その後継機であるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)や南米チリ・アタカマ砂漠に設置されている「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)」が将来観測する有望な候補を探すべく、数々の奇妙な銀河を調査してきた。欧州宇宙機関は「将来の観測の指針となるこのような調査は、観測時間の貴重な投資となる」とその意義を改めて評価している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 市場予

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中